研究実績の概要 |
本研究の目的は、iPS細胞を利用することでin vitroで杯細胞過形成モデルの作製を試み、杯細胞過形成の病態メカニズムを解明することである。平成30年度においては、iPS細胞とタバコ煙溶液を用いることで杯細胞過形成モデルを作製し、杯細胞の過形成に関与している遺伝子及びシグナル経路を解析した。 1.マウスiPS細胞を用いた杯細胞過形成モデルの作製 我々はマウスiPS細胞から機能性を有する気道上皮組織への分化誘導に成功した(Yoshie S et al., Journal of Cellular Physiology, 2019; Cell and Tissue Research, 2016)。この報告に基づき、iPS細胞から気道上皮組織へ分化誘導後、タバコ煙水溶液で1週間処理することで杯細胞過形成モデルの作製を行った。 2.マウスiPS細胞由来杯細胞過形成モデルの評価 上述の方法で作製した杯細胞過形成モデルをHE染色と免疫染色で解析した結果、HE染色では、iPS細胞由来気道上皮組織において線毛上皮細胞は観察されたが、iPS細胞由来杯細胞過形成モデルにおいては線毛上皮細胞が消失していた。また、アルシアンブルー染色や免疫染色では、iPS細胞由来杯細胞過形成モデルにおいて過剰な粘液産生を観察することができた。 3.マウスiPS細胞由来杯細胞過形成モデルのマイクロアレイ解析 杯細胞過形成を引き起こすメカニズムを調べるために、マウスiPS細胞由来気道上皮組織及びマウスiPS細胞由来杯細胞過形成モデルをマイクロアレイで解析した。その結果、発現に変動があった遺伝子が幾つか確認され、複数のシグナル経路が活性化されていることが示唆された。
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