研究課題
頭頸部癌に浸潤する制御性T細胞の特徴を解明するという目的のもと、サンプルの収集、フローサイトメトリーによる解析、またRNAシークエンスによる遺伝子発現解析を行い、データのまとめを行った。サンプル収集は順調に行われ、頭頸部癌の症例20例、比較対象として乳癌の症例6例のサンプルを収集し、解析を行った。主に手術で摘出された腫瘍もしくはリンパ節からリンパ球を採取し、フローサイトメトリーやRNAシークエンスにより解析を行った。その結果、頭頸部癌の原発腫瘍や頭頸部癌の転移のあるリンパ節においてFOXP3陽性の制御性T細胞の割合が多いことが確認できた。また、制御性T細胞において発現している様々な分子についても同時に解析を進め、特徴的な分子発現を確認できている。特に、細胞表面にCTLA-4という免疫抑制にかかわる分子を発現している制御性T細胞が頭頸部癌に多く浸潤していることを見出した。その他にも、PD-1や4-1BBといった免疫抑制、抗原特異性に関わる分子や、Ki-67という細胞増殖に関わる分子を発現しているものも多いことを発見した。また、RNAシークエンスを行うことで、制御性T細胞と、conventional T細胞との遺伝子発現の差を見出すことができた。遺伝子解析を行った4例についてはいずれも似通った遺伝子発現パターンを示しており、再現性の高い信頼できるデータであるといえる。さらに細胞表面にCTLA-4を発現している制御性T細胞は、細胞増殖に関係する遺伝子が高発現していることも見出した。以上のデータをまとめ、論文化した。また学会においても発表を行った。今後はさらにサンプルの収集を続け、同様の解析を行って結果の信頼性を高めるとともに、他の免疫担当細胞に着目した解析も進めていくよう準備をしている。
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Int J Cancer
巻: 144 ページ: 2811-2822
10.1002/ijc.32024