研究実績の概要 |
先天性難聴は1000人に1人と高頻度でその半数が遺伝性である。そのうちGJB2(コネキシン26)遺伝子変異は日本人で最も高頻度の原因遺伝子で、早期発見と治療方針を決定する上で本質的な発症原因の探求が重要である。しかしヒトの内耳では生検や侵襲的な生理学的検査は困難なため、ヒトのGJB2遺伝子変異と等価の動物モデルを、我々の研究グループは世界に先駆けgjb2遺伝子の優性阻害効果を示す変異体マウスを開発した。本研究では、日本人で最も高頻度で重篤な先天性内耳性難聴、GJB2(コネキシン26)遺伝子変異の難聴モデルマウスの組織学的評価にて病態を解明し、難聴の本質的な発症原因の探求と分子細胞レベルの治療法を確立することを目的とする。我々は、コネキシン26変異マウスのコルチ器におけるGreater epithelial ridge(GER)の過形成を確認し、内耳発達期のプログ ラム細胞死と細胞増殖の異常をすでに論文報告しており(Inoshita, BMC Genetics 2014)、本研究はその継続研究である。コネキシン26変異マウスに対してプログラム細胞死促進因子を投与することで、聴力と内耳形態が改善するか確認し、将来的な治療法の端緒となるか検討することを目的とする。本年度は発達期の内耳を用いた蝸牛のマイクロアレイ解析を行った。生後5日齢のマウスから蝸牛組織を摘出しtotal RNAをマイクロアレイに供した。対照としてコネキシン26遺伝子欠損マウスの蝸牛組織における発現解析を行い、コネキシン26の発達期におけるアポトーシスやその他の分子経路との関与を解析した。この解析結果によりコネキシン26が発達期における細胞増殖とアポトーシスに関与することを示す重要なデータが得られた。
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