研究実績の概要 |
【背景】遺伝性難聴は、1600出生に1人と高頻度で発症し、聴覚と言語発育に著しい障害を引き起こすため、極めて高度なQOLの低下をもたらす。特に、コネキシン26(Connexin26, Cx26)をコードするGap junction beta 2 (GJB2)遺伝子は、世界最大の遺伝性難聴の原因遺伝子である。Cx26 は、Cx30 と共に内耳支持細胞群において細胞間イオン輸送を行うギャップ結合(Gap Junction, GJ)を構築する重要な要素である。これまで、細胞治療や薬剤スクリーニングを目的としてES/iPS細胞から内耳細胞への分化誘導法が複数報告されているが、いずれも有毛細胞を対象としたものであった。これに対し、GJB2 難聴を含めた遺伝性難聴の原因となる細胞は、有毛細胞だけでなく支持細胞や線維細胞など多岐にわたることから新しい治療戦略が求められている。しかし、申請者らが報告するまでES/iPS 細胞からCx26 を発現しギャップ結合プラークを構築する細胞への分化誘導法は報告されていなかった。 【目的】本課題では遺伝性難聴の根本的な治療法の開発を目指し、1)分化誘導した細胞の機能性評価、2)疾患モデル由来iPS 細胞からの分化誘導と遺伝子修復、3)難聴モデルマウスへの細胞移植を行う。 【結果】マウスES細胞を用いてSFEBq法におけるコネキシン26を高発現する条件を検討した。その結果、分化誘導因子およびシグナル阻害剤を組み合わせることでコネキシン26の発現が強化されることが明らかとなった。
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