研究課題/領域番号 |
17K16950
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大淵 豊明 産業医科大学, 医学部, 講師 (00412651)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Pannexin-1 / TRPV1 / 線毛運動 / 鼻腔粘膜 / 多列円柱上皮細胞 / ATP / H2O efflux / ラット |
研究実績の概要 |
Transient Receptor Potential Vanilloid 1 (TRPV1)のantagonistであるcapsaicin刺激により、ラット鼻腔粘膜組織から細胞外へ放出されるATPが増加することを明らかにした。ラット鼻腔粘膜から単離した単一上皮細胞からパッチクランプ法を用いて電気記録を行い、電気生理的にTRPV1とPannexin-1とが機能連関していることを示した。Capsaicin投与によるATPの放出はPannein-1を経由しており、細胞外に放出されたATPは、鼻腔粘膜の多列円柱上皮細胞の線毛運動の活動性に関与することを明らかとした。TRPV1は温度を感受するthermo-sensorであり、TRPV1とPannexin-1は、呼吸に伴って外気温の影響を強く受ける鼻腔の生理機能において、極めて重要な作用を有するものと考えられた。以上の結果は、米国科学誌であるChannels誌において報告した。 さらに、ラットの鼻腔粘膜から単離した上皮有毛細胞にcapsaicinを投与した場合のmorphologicalな変化を観察したところ、細胞のapical sideが収縮することを見出した。この現象はTRPV1 blockerやPannexin-1 antagonist存在下では惹起されなかった。陰イオンであるATP-がPannexin-1を経由して細胞外へ放出される際に、H2Oも同時に放出されていることを示唆する所見であると考えられた。線毛運動を効率よく行うためには線毛周囲のliquidが一定量存在することが必要であり、Pannexin-1は陰イオンバランスを介して線毛周囲のliquidを保つ作用も有している可能性がある。この研究成果は、欧州科学誌であるEuropean Archives of Oto-Rhino-Laryngology誌において報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インパクトファクターを有する英文学術誌2誌(Channels, European Archives of Oto-Rhino-Laryngology)に研究成果を報告した。また、2017年秋に行われた病態生理学会大会におけるサテライトシンポジウム、2018年春に開催された日本生理学会総会における企画シンポジウムにおいて、これまでの研究成果を加えて発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
鼻腔粘膜細胞の機能について、これまで単一細胞の分子レベルという意味では集中的に施された研究は少ない。我々の講座では実験システムが確実に進歩していることから、引き続きこのシステムを用いて、今後はPannexin-1やATPに固執せず、あらゆる分子メカニズムを視野に研究を継続していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定した額より低額で物品、消耗品を購入することができた。年度末に使用額が集中した。 次年度は、引き続き鼻腔粘膜細胞のセルセンシング機構をさらに詳細に追及することを目的とし、試薬の購入、実験結果の解析、論文の執筆、論文投稿と発表、学会における研究成果の発表などに使用する。
|