研究課題/領域番号 |
17K16951
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
手島 直則 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (10749146)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 甲状腺結節 / 診断 / 細胞診 / cyclin D1 |
研究実績の概要 |
甲状腺腫瘍切除症例の腫瘍検体から102例のホルマリン固定パラフィン包埋ブロック(FFPE)から組織マイクロアレイ(TMA)を作成してcyclin D1免疫染色の実施を行った。病理組織診断におけるcyclin D1の陽性的中率(PPV)とcyclin D1による核染色率の中央値(MSR)について検討を行い、乳頭癌(PPV91.5%、MSR48.5%)、髄様癌(PPV100%、MSR66.4%)、濾胞癌(PPV77.8%、MSR34.2%)、低分化癌(PPV85.7%、MSR45.9%)、未分化癌(PPV33.3%、MSR15%)、WDT-UMP(PPV100%, MSR41.5%)、濾胞腺腫(PPV66.7%、MSR13.1%)、コントロールのMSR3.4%という結果が得られた。ついで細胞診検体におけるcyclin D1免疫染色の有用性について検討を行った。診断には液状化保存した細胞診検体を用いた。細胞診におけるcyclin D1免疫染色の検討では、個々の検体における細胞数の中央値は131個、1検体あたりのcyclin D1染色中央値は61%であった。甲状腺悪性腫瘍の細胞診におけるcyclinD1核染色率はカットオフ値46%で感度85%、特異度100%の診断が可能であった。病理組織検体ではcyclin D1染色率のカットオフ値5.8%で感度94.4%、特異度92.3%で腫瘍性病変の診断が可能であり、カットオフ値15.7%で感度86.4%、特異度80.5%で悪性腫瘍の診断が可能であった。FISH解析ではCCND1遺伝子の増殖は見られなかった。検体からNGSを行い、BRAF V600変異やHRAS、TP53変異の特定が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究予定であった甲状腺腫瘍におけるcyclin D1の発現と特徴について解析を行い、組織型による発現の違いについて明らかにした。また甲状腺結節におけるcyclin D1免疫染色を用いた細胞診診断が可能であり、液状化細胞診検体を用いることで次世代シークエンサーによって遺伝子診断まで施行することが可能であることが判明した。また、同研究結果を英文誌に投稿し受理され研究結果を世界に発信している。
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今後の研究の推進方策 |
穿刺吸引細胞診は甲状腺結節を診断するための日常的な方法であるが、いくつかの意義不明の診断となる結節は悪性腫瘍の可能性が含まれており、また細胞診のみで良悪を鑑別することは困難である。細胞診における診断困難な結節診断の一助としてcyclin D1スクリーニングシステムは高い感度、特異度により有効であると判断できる。この診断方法に次世代シークエンサーを併用し同定された遺伝子変異の結果と組み合わせることで個人化診療への迅速な治療戦略決定が可能である。しかし、本研究は後方視的研究であり、症例数が少なく、細胞診検体からのDNA抽出や液状化細胞診検体の保存に伴う細胞の不安定性などの問題点から、有効性の検証には限界がある。細胞学的検査および遺伝子分析のためのより多くの症例および十分なサンプルによるさらなる検証が必要とされるため、より多くの症例で有効性を確認する計画を立てていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後、研究結果の確認目的に異なったサンプルでの解析の可能性について検討する。また本研究結果の学会発表および学会参加による新たな研究発展のテーマを探索するために助成金を使用予定である。
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