研究実績の概要 |
甲状腺腫瘍切除症例の腫瘍検体から102例のホルマリン固定パラフィン包埋ブロック(FFPE)から組織マイクロアレイ(TMA)を作成してcyclin D1免疫染色の実施を 行った。病理組織診断におけるcyclin D1の陽性的中率(PPV)とcyclin D1による核染色率の中央値(MSR)について検討を行い、乳頭癌(PPV91.5%、MSR48.5%)、髄様 癌(PPV100%、MSR66.4%)、濾胞癌(PPV77.8%、MSR34.2%)、低分化癌(PPV85.7%、MSR45.9%)、未分化癌(PPV33.3%、MSR15%)、WDT-UMP(PPV100%, MSR41.5%)、濾胞腺腫(PPV66.7%、MSR13.1%)、コントロールのMSR3.4%という結果が得られた。組織組織診断でのcyclinD1染色率を基にして、液状保存した細胞診検体におけるcyclin D1免疫染色の有用性についても検討を行った。細胞診におけるcyclin D1免疫染色では、個々の検体における細胞数の中央値は131個、1検体あたりのcyclin D1染 色中央値は61%であった。甲状腺悪性腫瘍の細胞診におけるcyclinD1核染色率はカットオフ値46%で感度85%、特異度100%の診断が可能であった。病理組織検体で はcyclin D1染色率のカットオフ値5.8%で感度94.4%、特異度92.3%で腫瘍性病変の診断が可能であり、カットオフ値15.7%で感度86.4%、特異度80.5%で悪性腫瘍 の診断が可能であった。FISH解析ではCCND1遺伝子の増殖は見られなかった。検体からNGSを行い、BRAF V600変異やHRAS、TP53変異の特定が可能であった。甲状腺結節を細胞診で得た検体を用いてcyclin D1の染色率によって良性か悪性かのスクリーニングを行い、さらにNGSを用いることで遺伝子変異を特定し、良性か悪性かの診断を行うことが可能であった。
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