RPE65は網膜色素上皮に特異的に発現する酵素タンパク質で、視細胞外節で光照射によって生成された全トランスーレチナールを11-シスーレチノールに変換する異性化酵素である。RPE65遺伝子の変異により常染色体劣性網膜色素変性や若年発症であるレーバー先天盲といった遺伝性網膜変性疾患が発症することが知られており、さらに近年、RPE65遺伝子変異をもつ網膜色素変性に対する正常RPE65遺伝子導入による遺伝子治療が行われている。一方で、RPE65の欠損による視細胞への11-シスーレチナール供給不全に対し、9-シスーレチナールをサプリメントとして摂取することにより視機能が改善する症例がみられることも報告されている。このようにRPE65遺伝子変異には遺伝子治療や薬物療法といった治療法の可能性がある。本研究ではRPE65変異による網膜色素変性のモデル動物であるRPE65ノックアウトマウスを用いて9-シスーレチナール投与によって網膜形態が改善するか否かを検証することを目的としている。初年度はRPE65ノックアウトマウスにおける網膜変性の自然経過を光干渉断層計(OCT)により経時的に観察して、OCT所見によって観察される異常所見が病理組織学的および電子顕微鏡的にみられるどのような変化に対応するものなのかを検討した。その結果、定性的変化としては視細胞外節の変性ならびに短縮にともなう長さの不整に対応してOCTでの視細胞内節外節層のびまん性の高輝度化がみられ、これは生後120日齢まで不変であった。定量的変化としては外顆粒層が日齢とともに緩徐かつ進行性に菲薄化したほか、内節外節層が菲薄化を示したが生後50日から120日までは非進行性の経過を辿った。この進行過程については光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡での所見を対応させることによりOCTの所見の意味を明らかにした。
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