研究課題
網膜色素変性の原因遺伝子の1つにretinal pigment epithelium 65-kDa protein (RPE65)遺伝子変異が知られている。日本では遺伝子変異が判明する網膜色素変性全体の0.8%程度が本遺伝子の異常であることが知られている。RPE65遺伝子変異による網膜色素変性では網膜色素上皮細胞におけるall-trans-retinalから11-cis-retinalへの異性化が阻害されるため、視細胞への発色団である11-cis-retinalの供給障害をきたし、視細胞が徐々に変性することになることが想定される。近年、この病型に対してRPE65遺伝子を用いた遺伝子治療が可能となり、遺伝子治療への期待が高まっている。しかしながら、遺伝子治療は現在きわめて高額な治療法となるのが問題となっている。これに対して、11-cis-retinalに代わり、9-cis-retinalを外因性に全身投与することにより、視細胞への発色団の供給を試みる方法が考案されている。本研究では本病型のマウスモデルであるRPE65ノックアウト (RPE65-/-)マウス5頭に対して9-cis-retinalを経口投与して、その後の視細胞保護効果を網膜電図と光干渉断層計によって評価した。対照として無処置RPE65-/-マウス5頭についても同様な評価を行った。その結果、両者間にには形態的な差異はみられなかったものの、網膜電図にてa波の振幅が対照群では17.8マイクロVであったのに対し、9-cis-retinal群では54.4マイクロVと有意に髙値であった(P = 0.021)。このことから本病型には9-cis-retinalの経口全身投与が視機能の保持にはある程度効果があることが示された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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