事前に本研究について説明を行い、インフォームドコンセントが得られた33例33眼(糖尿病群21眼、対照群12眼)にたいして、術前にClearPath DS-120を用いた水晶体自発蛍光測定値(以下Lens-AF)を測定し、手術時に前房水を採取、採取後すみやかにRedoxSYSを用いて酸化還元電位と抗酸化力を測定した。対象の平均年齢は67.8±12.6 SD、糖尿病群の年齢は対照群と比較して優位に低かった(64.0±13.7 vs 74.5±6.6)。 術前のLens-AFは糖尿病群が対照群に比べ有意に高値であり、また糖尿病網膜症の重症度別では網膜症を認めない糖尿病症例(以下NDR)に比べ、非増殖糖尿病網膜症(以下NPDR)と増殖糖尿病網膜症(以下PDR)に進むにつれ高値となる傾向を認めた。 前房水から測定した酸化還元電位(以下ORP)についてもLens-AFと同様に糖尿病群が対照群に比べ有意に高値であり、糖尿病群での解析でも同様にNDRからNPDR、PDRと網膜症の病期の進行により高値となる傾向を認めた。 血糖コントロールの指標として術前検査にて測定したHbA1cとLens-AFおよび前房水ORPとの関連について解析したが、いずれも有意な相関関係は認めなかった。またLens-AFと前房水ORPとの間にも有意な相関は認めなかった。 Lens-AF、前房水ORPともに糖尿病群が対照群よりも高値を示し、糖尿病網膜症の進行により上昇する傾向を認め、HbA1cよりも網膜症の病期を評価する指標としての有用性が示唆された。次年度も引き続き検体の採取と測定を行い、検体数が揃った時点で測定誤差抑制のためプレートのLOT番号を統一したうえでELISAによる前房水サイトカイン濃度などの測定と解析を行う予定である。
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