研究課題
自施設で手術を受けた増殖硝子体網膜症(PVR)患者の増殖膜を術中に採取し、mRNA・タンパクの発現を確認した結果、Caveolin-1の発現が亢進していることを発見し、同様の変化を野生型マウスに作成したPVR眼球でも確認した。Caveolin-1ノックアウト(Cav1KO)マウスを入手し、実験的にPVRを作成した。その後組織を採取し、増殖性変化のメカニズムとして重要である上皮間葉転換のマーカーであるアルファSMAやVimentinの発現を比較した。また、野生型マウス・Cav1KOマウスからRPEのprimary cellを作成し、migration assayを行い遊走能に違いがあるか検討した。Cav1KOマウスのPVR眼球では、野生型マウスのそれに比べて細胞の増殖聖変化が強く、Smad2/3のリン酸化なども亢進した。これらのことから、増殖組織で発現するCaveolin-1は網膜色素上皮細胞の上皮間葉転換を抑制する作用があることが確認された。さらに、Cavolin-1は網膜剥離硝子体から確認されたmicroRNAの一つであるmiR199によって発現量が変化することを確認した。このことから、過去に我々が報告したmiR148だけでなく、miR199もCaveolin-1発現を介して増殖硝子体網膜症の発症に関与している可能性が示唆された。また、過去に報告数が少ないヒト硝子体中におけるmicroRNAの発現と、既報から確認されたmicroRNAの種類、さらに疾患との関連性について総説を作成した。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画に提出した研究計画は複数あり、当初それらの独立した研究を同時並行で行う計画であった。しかし実際には、患者や実験動物、細胞などの準備が整う速度が番うことから、研究の進捗速度に乖離が生じた。ただし、それらの研究計画の中から現在までに<microRNA148の網膜剥離眼球内での作用について検討する><Caveolin-1が増殖硝子体網膜症(PVR)の発症を促進するメカニズムを解明する>という研究計画において非常に順調に研究成果を得ることができ、国際論文に研究成果を発表することができた。以上の内容より、平成29年度に計画していた実験は概ね進展していると判断する。
本研究課題の申請時に予定していた残りの研究内容を予定通り進める。具体的には:<糖尿病網膜症(DR)でのEPA投与による網膜保護について、その作用機序を解明する>既に動物実験レベルにおいて、EPA投与によって網膜電図(ERG)の律動様小派(OP波)が回復した。この変化にミュラー細胞が関与している可能性があり、また興味深いことに近年、DRにおける網膜内慢性炎症とミュラー細胞の機能異常が言われている。そこで、今後ミュラー細胞とされるMIO-M1cellを英国Moorfield眼研究所から入手し、DRを模した炎症状態をin vitroで作成し、MIO-M1cellの機能障害を分析し、さらにEPAによるミュラー細胞保護効果を確認する。
本研究計画では、複数の難治性網膜疾患のそれぞれにおいて課題となっている研究課題を提示し、それらを研究期間中に同時並行して行う計画であったが、実際にはサンプルの収集速度や細胞の準備などで進捗速度に差が生じた。しかし、予定指定計画の中で<microRNA148の網膜剥離眼球内での作用について検討する>と<Caveolin-1が増殖硝子体網膜症(PVR)の発症を促進するメカニズムを解明する>という課題が先行して進められ、一方で他の実験を本格的に進めるのを次年度とし、それに伴い購入予定であった他の研究に対する研究試薬などの購入が次年度へずれ込むこととなり、次年度使用額が生じた。
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