研究課題/領域番号 |
17K16967
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
畑 匡侑 京都大学, 医学研究科, 助教 (70748269)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CYP4V2 / クリスタリン網膜症 / iPS細胞 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
CYP4V2ホモ変異をもつクリスタリン網膜症(BCD)患者3名、また対照群として、CYP4V2変異のない健常人3名からiPS細胞を樹立し、網膜色素上皮 (RPE) 細胞誘導法により、5~6か月かけてRPE細胞を誘導した。これらのRPE細胞は、形態的にメラニン色素をもつ六角形の敷石状細胞であり、RPE細胞のマーカータンパクを発現しており、成熟RPE細胞であることが確認された。また、健常人由来のiPS細胞から分化したRPE細胞では、正常CYP4V2タンパクの発現を認めたが、BCD由来RPE細胞では見られなかった。 BCD由来RPE細胞では、健常人由来の細胞に比べ、細胞の空胞形成、大型化などの変性所見を認めた。更に、BCD由来細胞では死細胞率が高く、正常CYP4V2遺伝子の導入によりレスキューされたた。透過電子顕微鏡で細胞内構造を詳細に確認すると、患者由来のRPE細胞ではオートファゴソームの蓄積がみられ、BCDの病態にオートファジーが関与している可能性を示唆する所見であった。実際に、BCD由来細胞では、リソソーム機能障害によるオートファジー分解系の障害が生じていることが明らかとなった。 次に、CYP4V2タンパクは脂質代謝に関わると考えられることから、LC-MS/MSを用いた網羅的な脂質解析を行った。まず、培養細胞を用いて、多価不飽和脂肪酸代謝物のtarget解析を行ったところ、多価不飽和脂肪酸に対するω、ω1位の水酸化活性を認めた。しかし、iPS細胞由来RPE細胞を用いて高感度解析を行ったところ、BCD由来細胞内では、これらの代謝物は健常人由来の細胞においてもほぼ検出感度以下であった。そこで、non-target解析を行ったところ、BCD由来RPE細胞内において、糖セラミド増加、コレステロールエステル低下を認めた。一方で、遊離コレステロールは、BCD由来RPE細胞で増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今までに、クリスタリン網膜症では、遊離コレステロール蓄積によりリソソーム機能障害が引き起こされて、細胞変性、細胞死が引き起こされていることが分かってきた。今後は、まず患者iPS由来網膜色素上皮細胞に対するコレステロール蓄積阻害剤の効果の検討を行う。具体的には、クリスタリン網膜症患者iPS由来の網膜色素上皮細胞を用いて、細胞内に蓄積した遊離コレステロールを排泄する作用のあるデキストリン誘導体HPBCDやHPGCDの有効性を評価する。更に、患者iPS由来網膜色素上皮細胞を用いた遺伝子治療の可能性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品および学会発表などの予算が、2年目に予定以上に必要と考えられたため。
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