研究実績の概要 |
開放隅角緑内障(OAG)のマーカーを探索するため、これまで蓄積していたOAGの患者101名より得られた前房水を用いてプロテオーム解析に着手した。OAG 69例, 新生血管緑内障32例、さらに正常者(白内障患者)100例を対象にサイトカインプロフィールの探索を行った結果、緑内障眼においては interleukin(IL) -1α, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-8, IL-23など多くの炎症性サイトカイン群の有意な増大を認めた。とくに緑内障か正常者であるかの判別をロジスティック回帰で行ったところ IL-8上昇が最も高いオッズ比を示し、これに IL-2, IL-10, IL-4, MCP-1が続いた。次に眼圧の上昇機序を探るため 術前眼圧と相関するサイトカイン群を調べたところ、IL-1β, IL-2, IL-5, IL-6, IL-8, IL-10, IL-12, IL-13, IL-15, IL-17, IFN-γ, TNF-α, MCP-1, VEGFなど多くのサイトカインが術前眼圧との高度な相関を認めた。次に視野障害と相関するサイトカインを検証した結果、IL-8は有意な相関を示した。 以上の結果より、眼圧上昇や視野障害に関連するマーカーあるいは治療標的候補としてのケモカインとしてIL-8およびケモカインシグナルの重要性がうかびあがってきた。そこで緑内障手術前のIL-8およびその他のサイトカインレベルが緑内障手術の予後に影響するかをコックス比例ハザードモデルで検証した。その結果、IL-8は緑内障手術後の予後不良に有意に寄与していることが判明してきた。さらに眼圧上昇機序にIL-8がいかに関わっているのかを検討するため、一般化構造方程式モデルを用いて術前眼圧、術前IL-8、術前MCP-1, 術前視野、と緑内障手術予後(生存期間)の関連性の数理モデルを作成した。
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