研究実績の概要 |
前年度による実績により、開放隅角緑内障の分子マーカー群として(IL-1β, IL-2, IL-5, IL-6, IL-8, IL-10, IL-12, IL-13, IL-15, IL-17, IFN-γ, TNF-α, MCP-1, VEGF)など多くのサイトカインが術前眼圧との高度な相関を認めた。これらの分子群が実際に診断マーカーにとどまるのか、あるいは予後予測にかかわる因子群であるのかを検証した。緑内障手術後の予後にいかなる影響するかをまったく機序の異なる二つの緑内障手術、すなわち線維柱帯切開術、線維柱帯切除術にわけて検討した。その結果、術後、眼圧再上昇をきたすまでの期間に有意に関連していたのは、IL-8と線維柱切除後の予後であった。一方、IL-8は線維柱帯切開術後の予後不良との有意な関連は認めなかった。また、マーカーとして特に有意な関連を示したもう一つのケモカイン、MCP-1は、術前眼圧に関連して上昇していたが、手術予後への直接的な影響はみとめなかった。以上より、IL-8は、流出路の閉塞やおそらくリモデリングに直接影響し、MCP-1がそれを修飾しているのではと想定された。そこで、これらのケモカインがヒト線維柱帯細胞にいかに影響しえるかの検討にうつった。ヒト培養線維柱帯細胞の分子応答をさぐるため、MCP-1やIL-8に対する機能的応答性の検討を始めた。また、線維柱帯炎をおこして眼圧上昇を来しやすい刺激としてサイトメガロウイルス感染があることを報告した。このためサイトメガロウイルス感染刺激後の包括的転写応答をRNA sequencingの手法を用いて解析した。以上の解析の中で線維柱帯の感染刺激においてIL-8が分子ネットワークの中でも高度に有意な関連を示すことを見いだし、さらなる解析をすすめつつある。
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