研究課題
日本における最大の失明原因は緑内障であり、40歳以上の有病率は約6%にのぼる。緑内障は眼圧上昇により網膜神経節細胞死とその軸索である視神経の変性が起き、結果的に回復不能な視野障害に陥るものと考えられてきた。しかし、本邦では眼圧が正常であるにもかかわらず緑内障症状を発症する正常眼圧緑内障 (NTG)が全体の約7割を占めることが判明している。また、この中には十分な眼圧降下が得られても病期が進行する症例もある。今後の緑内障治療においては眼圧以外の病態寄与因子の解明や新たな神経保護療法の開発が求められる状況にある。本研究ではNTGの疾患モデル動物と、非侵襲的な網膜観察法を組み合わせることにより、既存薬を含めた神経保護薬の探索を行う。候補薬については培養細胞における遺伝子や蛋白発現量の変化を、マイクロアレイや生化学的な手法で調べることにより選定する。投与後の網膜変性の状態を光干渉断層計や多局所網膜電図を利用して経時的に観察することにより、客観的なデータの取得を行う。また、Dock3と呼ばれるグアニンヌクレオチド交換因子には視神経損傷後の軸索再生を促進する効果だけでなく、RGC保護効果も報告されている。現在はDock3のアデノウイルスベクターが使用可能となっており、視神経挫滅後の軸索再生について Dock3による遺伝子治療効果を検討する。選定された候補薬による相乗効果を含めて、できるだけ視神経再生が促進しやすい条件を探索する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Invest Ophthalmol Vis Sci
巻: 59 ページ: 5542-5547
10.1167/iovs.18-25497.