研究課題/領域番号 |
17K16973
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田邉 美香 九州大学, 大学病院, 助教 (90621293)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナビゲーションシステム / 眼窩 / レジストレーション |
研究実績の概要 |
市販化されたナビゲーション機器は、「侵襲性が高い・精度が低い・汎用性が低い」など眼科領域で使用するには未だ多くの問題点がある。ナビゲーションシステムは髙い精度が術中維持されることが必要であるが、精度を上げるには軟部組織ではなく頭蓋骨へのネジ止めが必要となり侵襲性が高いことが問題となる。低侵襲に手術支援ナビゲーションを行う方法として、頭部バンドによるアンテナ固定や皮膚表面にマーカーを貼り付ける方法があるが、術操作や術中の頭部傾斜に伴いアンテナや皮膚が動いてしまい術中精度が落ちて信頼性のあるナビゲーションが行えない。また、手術室での準備作業に多くの労力と時間を要し、汎用性という点でも多くの問題点を有している。我々は上歯列にリファレンスフレームを固定する新しいナビゲーションシステムを作成し、改良した。上歯列の形状に沿ってデザインされた歯形は位置再現性があり,取り外しが可能であった。手術ナビゲーションシステムの運用において、患者の3次元座標とCT画像の座標を正確に重ね合わせるレジストレーション(位置合わせ)といわれる作業が必要である。この作業によって、実際の場所と画像上の場所を一致させることができる。歯形には金属ピンが埋め込まれたリファレンスフレームを取り付けるので、歯形を装着して術前CT を撮影することでレジストレーション用のマーカーとなり、再現性がある歯型により術前からレジストレーションが可能であり、術中CT撮影やレジストレーション作業を行う必要がない。また、歯型を利用して固定するので、ナビゲーション運用に際して侵襲性のある作業はなくなる。ナビゲーション精度誤差は術中安定して1mm以下であり、常に安定した精度が保てていることを確認した。このナビゲーションシステムの開発によって侵襲性・精度・術中の煩雑な作業やCTによる被爆の問題が解決される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の対象疾患は眼窩腫瘍切除術、眼窩内容除去術、涙嚢鼻腔吻合術など手術手技の中に「眼窩骨切除」という手技を含むものであり、その対象者は本研究について十分理解し、本人による同意が可能な患者である。眼窩骨ナビゲーション手術そのものを行うかどうかの判断は従来通り疾患の種類、手術の困難度、医師と患者との相談によって医学的に判断され、その手術説明および同意は九州大学病院公認の手術説明書・同意書を用いて行っている。このナビゲーションシステムを用いると術前マウスピース作成、マウスピース装用下のCT撮影が必要になり、外来通院回数もしくは入院期間が延長されるため同意が得られないことがあり、これまで施行した症例数が7例となっている。
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今後の研究の推進方策 |
更に症例数を増やして手術時のナビゲーションシステムの誤差、手術時間、骨切除範囲、合併症の有無と程度の情報を収集し、有効性について検討する。さらに新規ナビゲーションシステムは3D slicerというオープンソースのソフトウェアを用いて制御しているが、レジストレーション作業や術中操作にはこのソフトウェアの知識が必要となり、医師やコメディカルスタッフが感覚的に操作するには煩雑で操作性が劣る。ソフトウェアの操作をより簡便に行えるようにし、レジストレーション作業もガイダンスに従って誰でも行えるようなナビゲーション操作用ソフトウェアを開発する。また、タッチパネルによる操作も行えるハードウェアの開発も同時に行う。上歯列固定の歯型作成も現在は歯科医によって行っているが、歯科医の協力がなくとも歯型作成が可能となる方法も開発していく。また、歯型のない乳幼児疾患でもナビゲーションシステムが使用できるように上歯列の歯型ではなくに硬口蓋で固定する方法も開発していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の対象疾患は眼窩腫瘍切除術、眼窩内容除去術、涙嚢鼻腔吻合術など手術手技の中に「眼窩骨切除」という手技を含むものであり、その対象者は本研究について十分理解し、本人による同意が可能な患者である。眼窩骨ナビゲーション手術そのものを行うかどうかの判断は従来通り疾患の種類、手術の困難度、医師と患者との相談によって医学的に判断され、その手術説明および同意は九州大学病院公認の手術説明書・同意書を用いて行っている。このナビゲーションシステムを用いると術前マウスピース作成、マウスピース装用下のCT撮影が必要になり、外来通院回数もしくは入院期間が延長されるため同意が得られないことがあり、これまで施行した症例数が7例となっており、物品費が計画より少なくなっている。今後、症例を増やし更なる検討を行うとともに、新たにソフトを購入し、画像解析、統計解析を行っていく予定である。
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