加齢黄斑変性(AMD)の病態機構はいまだ不明である。近年、補体のレクチン経路と第二経路の両者の活性化が、炎症のトリガーとしてAMDの発症に関与することが示唆されている。一方、我々は、セリンプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)のMASP-1とMASP-3 が、レクチン経路と第二経路の活性化に必須の補体因子であることを明らかにしてきた。 1. 滲出型AMDモデルマウスへの補体阻害剤MAp44-fHの治療効果 最近、我々はレクチン経路阻害作用のあるMAp44と第二経路制御因子であるfHを融合させたMAp44-fHを作製し、in vitroにて補体レクチン経路と第二経路の阻害作用を確認した。平成29年度は、MAp44-fHのin vivoでの機能解析を行った。12週齢の野生型C57BL/6マウスにMAp44-fH 710 μgを腹腔内投与し、投与前および投与開始後1、2、4、8、24、48 時間毎に血清を採取した。採取した血清中のMAp44-fH濃度をPA tag抗体を用いたELISA法にて測定したところ、MAp44-fH投与後4時間でピークに達し、48時間後には体内からほとんどがクリアランスされた。また、経時採血により得られた血清を用いたmannan coat C4 deposition、ザイモザン粒子へのC3 depositionでは、PBS投与群と比べC4及びC3 depositionの抑制効果が認められた。しかしながら、補体レクチン経路と第二経路が阻害されているMASP-1/3KOマウスほどではなく、in vivoでの補体レクチン経路と第二経路の阻害作用は不十分と考えられる。 2. ヒト滲出型AMDの前房水中における補体因子MASP-1/3の解析 本年度は、滲出型AMD患者及び白内障患者の前房水を治療時に採取した。
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