研究課題
加齢黄斑変性(AMD)の病態機構はいまだ不明である。近年、補体のレクチン経路と第二経路の両者の活性化が、炎症のトリガーとしてAMDの発症に関与することが示唆されている。一方、我々が所属する研究室では、セリンプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)のMASP-1とMASP-3 が、レクチン経路と第二経路の活性化に必須の補体因子であることを明らかにしてきた。1. ヒト滲出型AMDの前房水中における補体タンパク質の解析滲出型AMD患者及び白内障患者の前房水中における補体タンパクをbeads based assayまたはELISAにて測定した。測定した結果、AMD病態への眼内における古典経路とレクチン経路の一方または両方の活性化の関与が示唆された。2.抗補体薬sMAP-fHを用いた滲出型AMDモデルマウスの治療効果野生型のC57BL/6マウスの網膜にグリーンレーザーを照射し、滲出型の加齢黄斑変性様病変を誘導した。照射後直ちにsMAP-fH、抗VEGF抗体、PBS を硝子体に投与し、1週間後に血管内皮に対する蛍光抗体を用いて各群の脈絡膜新生血管の面積を評価し、治療効果を検討した。脈絡膜新生血管の面積において全ての群間で有意差はなかったものの、PBS投与群と比較してsMAP-fH投与群は抗VEGF抗体投与群と同程度に脈絡膜新生血管面積の縮小がみられた。
2: おおむね順調に進展している
加齢黄斑変性の病態に補体古典経路またはレクチン経路の関与が明らかとなったため。
①ヒト滲出型AMDの前房水中における補体タンパク質の解析各疾患群でのサンプル採取数を拡大して各補体タンパク質の解析を進める。②抗補体薬sMAP-fHを用いた滲出型AMDモデルマウスの治療効果AMDモデルマウスを用いて、AMDの病態へのレクチン経路の関与や、sMAP-fHによる治療効果を検討する。
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