研究課題
加齢黄斑変性(AMD)の病態機構は未だ不明である。近年、補体レクチン経路と第二経路の両者の活性化が、炎症のトリガーとしてAMDの発症に関与することが示唆されている。本年度は、滲出型AMD患者および白内障患者から採取した前房水における補体タンパク質の解析を行った。まず、滲出型AMD患者および白内障患者の前房水中における補体成分C4とC3濃度をELISAにて、それらの活性化産物であるC4a濃度とC3a濃度をbeads based assayにて測定した。測定した結果、滲出型AMD患者の前房水中で、白内障患者の前房水中に比べC4とC3の低値とC4aとC3aの高値、およびそれらの活性化指数であるC4a/C4比とC3a/C3比の高値を認めた。このことは、滲出型AMD患者の眼内で第二経路に加え、補体古典経路とレクチン経路の一方または両方が活性化していることを示す。次に、古典経路の関与を検討するため滲出型AMD患者および白内障患者前房水中の各抗体アイソタイプ(IgM、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA)濃度をbeads based assayにて測定した。その結果、IgG2は滲出型AMD患者群で有意な高値を認めたが、それ以外の抗体アイソタイプで有意な差を認めなかった。IgG2は、IgG1やIgG3に比べ古典経路活性化能が弱いことから、滲出型AMDの病態に古典経路が関与している可能性は低いことが示唆された。また、レクチン経路の関与を検討するために、レクチン経路固有の補体因子MASP-2濃度をELISAにて測定した。その結果、滲出型AMD患者の前房水中では、白内障患者の前房水に比べMASP-2の低値を認めた。このことは、MASP-2が眼内のレクチン経路の活性化による消費、あるいはMASP-2の産生低下が可能性として考えられる。
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