研究課題
涙液は、眼表面環境の恒常性維持に必須の体液であり、涙液量は、中枢による自律神経支配と、局所の涙腺機能により制御されている。涙液分泌は、情動、角膜からの痛覚刺激により惹起される、脳延髄に位置する涙液分泌中枢の興奮が、涙腺に投射する副交感神経を経て、涙腺に入力されることで生じる。本研究では、高等霊長類であるヒトのみが有する「泣く」という生理現象メカニズムの解明を目指す。本目的を達成するためには、「泣く」状態における、脳-涙腺活動の連動性を生体にて再現可能な実験系が必須であるが、これまでに脳-涙腺活動の直接的な関わりに着目した研究例はない。そこで、涙液分泌を支配する脳神経回路活動時の涙腺活動を可視化しうる実験系の確立を行った。涙液の異常は、ドライアイを始めとした、様々な眼表面疾患を引き起こし、視覚異常によるQuality Of Lifeの低下を招く。本研究は、「泣く」メカニズムに着目した、眼表面疾患の根本的治療法を確立するうえでも重要である。昨年度までに最適化した、角膜痛覚刺激応答・涙液分泌を司る涙液分泌中枢の恣意的操作法(薬理遺伝学)と、FRETを基盤とした涙腺筋上皮細胞、腺房細胞特異的カルシウムプローブ発現マウス、二光子顕微鏡を組み合わせ、角膜痛覚刺激応答時、涙液分泌中枢刺激時の涙腺活動を生体イメージング法により比較した。角膜痛覚刺激時には、涙腺筋上皮細胞の一過性の活性化による涙液排出、涙液分泌中枢の恣意的操作時には涙腺腺房細胞の持続的な活性化による涙液産生が生じていることが示唆された。
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The American Journal of Pathology
巻: 190 ページ: 1068-1079
10.1016/j.ajpath.2020.01.007.
巻: 189 ページ: 1699-1710
10.1016/j.ajpath.2019.05.015.