研究課題/領域番号 |
17K16984
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大内 亜由美 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80645664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / マイクログリア / 未熟児網膜症 / 網膜新生血管 |
研究実績の概要 |
網膜マイクログリアの活性化に重要なシグナルとしてTGFbシグナルに着目し、TGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウスを作成し、マイクログリア特異的TGFbシグナルの欠損によるマイクログリアの活性化が、網膜血管およびニューロン、その他グリアへどのように影響するか検討することを試みた。同マウスにおいて、マイクログリアはameboid状の強い活性型の表現形を呈し、perivascular area に集まることを確認した。これらのTGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウスにおける活性型マイクログリアの網膜血管への影響を検討するため、糖尿病網膜症の2大病態である、網膜血管透過性および病的新生血管を評価した。 網膜血管透過性は、デキストランの静脈投与にて評価したところ、TGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウス網膜は、TGFBR2 flox (コントロール群)と比較して血管透過性亢進を認めた。 病的新生血管に関しては、生後7日から12日の間、75%高酸素条件下で飼育するOxygen-induced retinopathy(OIR)モデルを用いて、網膜病的新生血管(Neovascularization; NV)および網膜虚血(Vaso-obliteration; VO)を評価した。NVの程度が最高になるP17においても、通常NVもVOも正常化を呈すP21においても、TGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウスのOIRは、コントロール群のOIRと比較して、有意にNVおよびVOの悪化を認めた。 これらより、TGFbシグナルを欠損したマイクログリアは、活性化型に変化し、さらに網膜血管に接着した後、血管透過性亢進および病的新生血管に大きく機能していると考えられた。また、糖尿病網膜症や未熟児網膜症などの網膜血管病において、マイクログリアの活性化が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画遂行の中で得られた知見より、TGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウスの解析を追加したため、トランスジェニックマウスの作成に時間を要した。それによりやや計画は遅れているものの、モデル作成後は順調に解析が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、TGFbシグナル欠損マイクログリアが網膜血管透過性亢進および病的新生血管増悪へのメカニズムを探索するため、網膜ペリサイト、内皮細胞への影響を評価する予定である。具体的には、TGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウス網膜におけるペリサイトマーカーNG2、Desmin、内皮細胞マーカーCD31, CD34を用いた免疫染色、さらにTGFBR2 flox; CX3CR1-Cre マウス網膜より、マイクログリア、ペリサイト、内皮細胞を単離し、それぞれの細胞群における網羅的遺伝子発現変化を、RNA シークエンスを用いて解析し、マイクログリアの活性化状態と血管の相互作用をより詳細に解析する予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用するモデル動物の追加を行ったことからその樹立に時間を要し、もっとも予算が必要になるRNAシークエンスによる受託解析が今年度までに施行ができなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、セルソーティング、免疫染色を施行するにあたり生じる消耗品、およびRNAシークエンス受託解析のために使用する計画である。
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