研究課題
本研究課題は、P2X受容体の網膜における視覚情報処理に対する役割を解明することを目的として実施された。P2X受容体は、P2X1からP2X7までの7つのサブタイプが知られており、網膜内にすべてのサブタイプの発現が認められている。しかしながら、いずれのP2X受容体サブタイプが網膜内のどの部位で視覚情報の伝達に関与しているのかは不明である。これまでに申請者が行ったP2X受容体に対する非選択的アンタゴニストを用いた検討により、P2X3受容体が視覚情報の修飾に関与していることが推定された。そのため、網膜電図を用いてP2X3受容体に対するアンタゴニストを眼内へ投与し、網膜機能への影響を検討したところ、暗順応下にてOP波の振幅の減弱が認められた。P2X3受容体を発現し、視覚情報の伝達に関与する細胞種を同定するため、視細胞及び双極細胞へATPを作用させたときの電流応答をパッチクランプ法にて検討したが、検討した条件にて反応する細胞はみられなかった。一方、網膜から脳へ情報を伝達する役割を担う、網膜神経節細胞の光刺激時の応答について、P2X3受容体アンタゴニストの投与により活動電位の発生頻度が変化する細胞が認められた。これらの結果、P2X3受容体はアマクリン細胞または網膜神経節細胞に発現しており、網膜内の視覚情報処理に作用し、脳への伝達情報に影響を与えていることが示唆された。マウス網膜におけるP2X3受容体の分布を調べるため、複数の抗体を用いて免疫組織化学を実施したが、十分な特異性を示す抗体がみられなかった。今後、免疫組織化学に代わり、in situ hybridizationにてP2X3受容体を発現している細胞を同定する予定である。また、P2X3受容体ノックアウトマウスが十分に繁殖され次第、薬理学的な検討により認められたP2X3受容体への作用について裏付けを行う予定である。
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The Journal of Experimental Medicine
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