腸管不全(IF:intestinal failure)とは、小児では成長に十分な栄養と水分を吸収するための最低限の小腸容量あるいは機能の重大な低下と定義される。一般に小腸の70-80%が切除されると短腸症候群(SBS:short bowel syndrome)とされ、厳密な栄養管理、特に経静脈栄養(PN:parenteral nutrition)が行われる。IF/SBSにおける長期PNは、肝障害を併発し、近年、IFALD(intestinal failure-associated liver disease)と呼ばれ、新生児・乳児においては致命的となり得る病態である。近年、IFALDに対する魚油由来ω3系静注用脂肪製剤(Omegaven)の有用性が報告されているが、その機序は解明されていない。一方、肝線維化、肝硬変の進行にはコラーゲンなどの産生の担い手である肝星細胞の関与が知られており、本研究では肝星細胞に着目しOmegavenの作用機序について検討した。 ヒト肝星細胞株を用いた実験においてOmgaven投与群はコントロール群、Intralipid(大豆由来ω6系静注用脂肪製剤)投与群に比べ、細胞内脂肪滴を有する傾向にあり、細胞増殖能が有意に低く、活性化を抑制していた。また、Omgaven投与群はコントルール群に比べⅠ型Collagen及びαSMAのmRNA発現が有意に低かった。以上より、Omegavenが肝星細胞の活性化を抑え、細胞外マトリックス産生を抑制することでIFALDに対して有用である、という新たな機序の可能性が示唆された。
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