研究課題
難治性疾患である胆道閉鎖症の病態において、腸内細菌叢および腸内細菌の産生する短鎖脂肪酸が関与するかを検討した。胆道閉鎖症(BA群)8例、非胆道閉鎖症(DC群)4例、および健常1ヶ月児(HC群)72例から便サンプルを採取し、代謝物と細菌DNAを抽出した。便中短鎖脂肪酸はガスクロマトグラフィー質量分析、腸内細菌の菌叢解析は16S rRNA amplicon sequencingを用いて測定した。3群間での患者背景は月齢および出生体重がDC群で有意に少ない他は、胎生週数や帝王切開の割合は同程度だった。便中短鎖脂肪酸濃度は総短鎖脂肪酸、蟻酸、酢酸においてBA群とDC群で有意にHC群より増加していたが、BA群とDC群の間に差はみとめかった。また制御性T細胞の誘導し、抗炎症的に作用する関与する酪酸の差はみとめられなかった。BA群とDC群における短鎖脂肪酸の変化は、疾患特異的なものではなく、閉塞性黄疸に伴う腸管への胆汁分泌の低下を反映したものと考えられる。菌叢解析ではBA群でDC群間で腸内細菌叢の全体像(β多様性) は大きく変化しなかったが、多様性 (α多様性/Simpson's index) はBA群でDC群より有意に高かった。α多様性のBA群での増加は、DC群の月齢がBA群より小さいことに起因している可能性がある。またIndicspeciesにより2群間における特徴的な12のoperational taxonomic uni (OTU) を抽出した。そのうちOTU0057はBA群で有意に増加していた。またBA群の87.5%に検出されたが、DC群では全く検出されず、BA群で特徴的な菌である可能性が高いと考えた。今後、研究期間の後半で回収したサンプルの解析中であり、現存データと統合 (菌叢解析はHC群のデータを統合 ) して 追加解析を行っていく。特徴的なOTUに対する単離同定を行い、その生理機能、特に腸管免疫における機能について検討していく。
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