研究課題/領域番号 |
17K17000
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大島 一夫 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (20764880)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自然リンパ球 / 腸管免疫 / 低侵襲 / 腹腔鏡手術 |
研究実績の概要 |
平成29年度まではマウスを使って開腹手術・腹腔鏡手術に準じた侵襲を与える実験モデルを作成し、マウスでの実験を行った。平成30年度もそのままマウスの実験を重ねる予定であったが、ヒトの症例で研究を行った方が実臨床に沿っているだろうと判断し、実際にヒトで手術を行った症例の腸管を検体とする方針に切り替えた。つまり、ヒトの腸管においても3型自然リンパ球(ILC3)等の腸管リンパ球が、手術侵襲に対する自然免疫応答に関与していると仮説を立て、ヒト小児腸管における免疫細胞の分布や機能を評価した。 結果、名古屋大学附属病院小児外科の手術において切除されたヒト腸管28検体に対して、フローサイトメトリーを行い、腸管リンパ球の分布を調査することができた。また、そのうち8例については、一細胞ごとにラベリングを行った上で網羅的解析を行い、4例についてデータを得ることができた。網羅的解析結果から手術検体に炎症性サイトカインの産生を認めるが、症例ごとの差を確認できるまでには至っていない。 自然リンパ球からの炎症性サイトカイン発現に着目し、一部はヒト腸管検体からcDNAを抽出して、炎症性サイトカインに着目したPCRを行った。この結果、胎児期のヒト腸管では免疫細胞に機能不全があり、一部の炎症性サイトカインの発現が低い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの腸管リンパ球を扱う事からヒトの検体を使用することに方針を変更した。 ヒト腸管28検体に対するフローサイトメトリーと、そのうち8例に対する単細胞網羅的解析を行ったが、有意な結果は得られていない。自然リンパ球からの炎症性サイトカイン発現に着目した、ヒト腸管検体のPCRとフローサイトメトリーでのサイトカイン解析も導入したが、腹腔鏡手術と開腹手術の侵襲の差を裏打ちするような明らかなデータはまだ得られておらず、進捗状況としてはやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後もヒト検体を用いて、フローサイトメトリーでのリンパ球分画の同定やサイトカイン解析、ソーティング単細胞網羅的解析を継続し、データを蓄積する。それとともに、すでに単細胞網羅的解析を行った検体のデータに対して、免疫学的な最新知見を盛り込んで統計学的解析を行い、実際にサイトカイン発現等に関して、腹腔鏡手術と開腹手術間に差を認めるのか、その他異常所見がみられないかを検討していく。また、最終的な結果は論文発表を行い、今後の研究や新治療への展開を図っていく方針である。
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