研究課題
カルシニューリンインヒビターにより、臓器移植後のグラフト生存率は改善したが、小腸移植後の高濃度下では腎不全を生じることがある。PQA-18(プレニルキノリンカルボン酸誘導体)は、PAK-2を阻害することにより、サイトカイン産生とマクロファージ(Mφ)分化を抑制する新規免疫抑制剤であり、ラット小腸移植モデルを用いてその効果を評価した。【方法】DAラットをドナーとして、レシピエントのLewisラットに異所性小腸移植を行ったレシピエントは術後1日目から2週間、PQA-18(4mg/kg/day)を腹腔内投与しグラフト生存期間を評価した。移植後6日目にレシピエント腸間膜リンパ節(MLN)からT細胞を分離して混合リンパ球反応(MLR)を行い、グラフト腸間膜リンパ節(gMLN)とパイエル版(gPP)での浸潤Mφを測定した。【結果】グラフト生存期間は7.0±0.77日vs10.7±1.26(p<0.001)と非投与群比べPQA群で優位な延長を認めた一方で、腎機能の値に差は認めなかった。MLRは9.41±1.21 vs 4.71±0.55(p<0.05)と投与群で低く、PQA投与によりT細胞の抑制が示唆された。また、gMLNのMφは60.55±2.18% vs 45.20±3.2%(p<0.01)、gPPで42.42±3.61% vs 29.8%±3.2%(p<0.05)といずれもPQA群でグラフトリンパ節内のMφの減少を認めた。さらに骨髄幹細胞からMφへの増殖・分化はPQA存在下で14.45±2.40% vs 5.01±2.09%と抑制されることも確認した。【結論】PQA-18は従来の免疫抑制剤とは異なる経路でグラフト生存を延長させ、腎障害を伴わない新たな免疫抑制剤としての効果が期待できた。
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Transplant Immunology
巻: 57 ページ: 101246~101246
10.1016/j.trim.2019.101246