研究課題
1990年から同意を得て保存しえた神経芽腫、肝芽腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫症例の外科的切除腫瘍および、術前と術後の血漿(血清)、骨髄、腹水、胸水が保存されている症例97例を対象に以下の検討を行った。1.遺伝子変異スクリーニング:既に遺伝子異常が判明している腫瘍の腫瘍由来のDNAと診断時血漿(血清)由来遊離DNA(cfDNA)、次世代シークエンサー(Cancer Panel等)にて遺伝子異常の測定を行った。その結果、遺伝子変異はほぼ100%検出できたが、miRNA発現との相関は乏しかった。神経芽腫のMYCN遺伝子増幅の検出では、腫瘍DNAに比べ、cfDNAのコピー数が高く、腫瘍細胞自体のコピー数そのものを反映していると考えられた。また、cfDNAを用いたデジタルPCRで肝芽腫のβ―カテニンエクソン3の変異と欠失を検討し、腫瘍組織のデータと照合したところ、前者は98%、後者は66%の一致率であった。神経芽腫MYCN増幅例では全摘後検出されなくなり、一方、骨、骨髄転移が遺残している症例ではコピー数の増加が継続し、微小残存病変の指標としての有用性が示唆された。2.キメラ遺伝子検索: キメラ遺伝子が検出されている肉腫症例において、腫瘍キメラ遺伝子の部位から、特異的なPCRプライマーとプローブを設計し、デジタルPCRを用いて検索を試みた。特異的部位についての検出は一部症例で可能であったが、検出率は50.2%にとどまった。3.遊離RNA(cfRNA)の検索: 体液特に血液中のcfRNAキメラ遺伝子の定量をデジタルPCRを用いて試みる系の策定行ったが、cfRNAからのcDNA生成が不確実で検出は困難であった。以上から、血漿中cfDNAを用いたデジタルPCR法は小児がんのリキッドバイオプシーとして有効である一方、cfRNAについては現時点では困難と考えられた。
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European Journal of Molecular Cancer
巻: 1 ページ: 2-8
10.31487/j.EJMC.2018.01.003