研究課題/領域番号 |
17K17004
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
末吉 亮 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (10724172)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 短腸症候群 / タイト結合蛋白 / バクテリアルトランスロケーション / DPP4阻害薬 |
研究実績の概要 |
我々は本研究の研究目的として、糖尿病治療薬として認可されているDPP4阻害薬により、マウス短腸症候群モデルを用いて病原性腸内細菌の体内侵入(以降 バクテリアルトランスロケーション)を防ぐことができるかということを検討してきた。前年度はマウスの短腸症候群モデルの生存率が悪く、研究モデルの作成に難渋していた。今年度は手術時の環境や術後の保温など、マウスにとっての環境を整えるべく、術前のマウス飼料のゼリー食への変更や術中・術後のヒーターによる保温を行うことで、生存率を上昇させることができた。DPP4阻害薬投与群5匹、コントロール群7匹の研究期間(1週間)の生存が可能となり、検体採取を行うことができた。検体については、研究計画に則り、病理染色用の腸管組織・腸管粘膜擦過組織(real time-PCR法、ウエスタンブロット用)、偏検体、血清検体(血中GLP-2測定用)を全てのマウス検体で採取できている。 そして、バクテリアルトランスロケーションに関わる腸管上皮細胞のタイト結合蛋白に関して、主に研究を遂行した。E-cadhelin, Zo-1, Occludin, Claudin1, Claudin4についてreal time-PCR法にてコントロール群とDPP4投与群との比較検討を行なった。E-cadhelin、Zo-1に関して、DPP4投与群で有意に高値を呈していた。これは以前の研究結果であるDPP4阻害薬投与群の腸管粘膜における膜透過性低下に、これらの蛋白質が関与していることが示唆される結果であった。 更に蛍光免疫組織染色を行い、これらE-cadhelin, ZO-1に関するDPP4阻害薬によるマウス短腸症候群モデルでの変化を定量化できるよう、試行錯誤している状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初2年計画での研究申請であった。初年度は前述したようにモデルマウスの作成に難渋したため、研究の進捗が遅れた。今年度は研究概要に記載した内容の中で、タイト結合蛋白に関して、本研究における主眼の蛋白質がE-cadhelin, Zo-1であることが特定できた点は評価できると自負している。 一方で研究計画では、腸間膜リンパ節の培養検査や便検体でのシーケンス解析を今年度の目標としていたため、その研究遂行ができなかったことに関して、反省すると共に、来年度の研究繰越申請をさせて頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、real time-PCR法に於いて有意差のあったE-cadhelin, Zo-1に関して、蛍光免疫染色もしくはウェスタンブロット法を用いて、両群間での蛋白質の定量化を図っていく。そして、研究計画の中で遂行できていない腸間膜リンパ節での培養検査や便検体でのシーケンス解析を行っていく。費用的な面でシーケンス解析の施行が難しい場合は、偏中の腸内細菌に関して、特定菌種のreal time-PCR法を施行し、シーケンス解析結果の代用とする方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2年間の研究計画で申請を行ったが、前述したように、マウス短腸症候群モデルの作成に難渋した。現在、研究は徐々に進行している状況であるが、2019年度に繰越して施行すべき実験が複数存在している。2019年度は少ない研究費残金を有意義に使用し、明確な研究成果を上げていきたい。
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