研究実績の概要 |
我々は本研究の研究目的として、糖尿病治療薬として認可されているDPP4阻害薬により、マウス短腸症候群モデルを用いて病原性腸内細菌の体内侵入(以降 バクテリアルトランスロケーション)を防ぐことができるかということを検討してきた。
今年度は腸管上皮細胞での腸管バリア機能の重要な構成因子となるタイト結合蛋白/細胞間結合蛋白について、研究対象群をA群. 短腸症候群(-),DPP4阻害薬(-)/ B群. 短腸症候群(-), DPP4阻害薬(+) / C群. 短腸症候群(+), DPP4阻害薬(-) / D群. 短腸症候群(+), DPP4阻害薬(+) の4群に分類し、比較検討を行なった。Real time PCR法と蛍光免疫染色法により検討を行ったところ、Real time PCR法ではコントロール群であるC群と比較して、治療群であるD群においてE-Cadherin, Occludinに関して、有意差をもって高値となっていた。また、蛍光免疫染色法による陽性細胞の割合についてもC群とD群との比較において、E-Cadherin, Occludinに関して有意に高値を呈していた。
我々はDPP4阻害薬が短腸症候群における腸管上皮細胞の細胞間結合を増強させることを立証した。この結果は近年注目されているDPP4阻害薬の抗炎症作用に関連している可能性が示唆された。さらにDPP4阻害薬は短腸症候群におけるバクテリアルトランスロケーションの低減をもたらし、短腸症候群患者のQuality of lifeの向上に寄与するのではないかと期待された。しかし、DPP4阻害薬の抗炎症作用に関連した作用機序については同定できなかったため、今後の研究課題としていきたい。
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