研究課題
昨年から継続して、小腸常在マクロファージの小腸炎における制御性機能を検討した。非ステロイド性抗炎症薬 (Non-steroidal anti-inflammatory drug; NSAID) を用いて、マウス小腸炎を誘導し、小腸常在マクロファージの役割を解析した。マウスにNSAIDを経皮的に投与した群では、コントロール群と比べて、優位な体重減少および小腸粘膜の透過性亢進が認められた。本モデルでは、NSAID投与3日目に体重が最も低値となり (Acute phase)、その後緩やかに体重の改善傾向を認める (Recovery phase)。Acute phaseにおいて、小腸粘膜組織を採取し炎症性サイトカインの発現をmRNAレベルで調べたところ、TNF-α、IL-6、IL-1βのいずれも上昇を認めた。一方で、抑制性サイトカインであるIL-10の上昇も認めた。本結果から、IL-10が小腸の上皮修復 (Recovery phase) に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。続いて、上皮修復におけるIL-10の役割を検討するために、IL-10ノックアウトマウス (KO) を用いて小腸炎モデルを作成した。IL-10KOマウスでは小腸炎の増悪および上皮修復ができずに高い死亡率を呈した。フローサイトメトリーを用いた解析により、小腸炎においてIL-10を産生する最も主要な細胞がCCR2+ 単球由来のCD64+ Ly6Clo MHC-II+マクロファージであることが明らかにされた。また、これら一連の小腸IL-10産生性マクロファージによる上皮修復が、腸内細菌叢とは関連のないことを示した。今後、このモデルを用いて、小腸マクロファージの制御や上皮修復に関連するアミノ酸の同定を行う。
2: おおむね順調に進展している
NSAID小腸炎モデルを確立し、小腸マクロファージの機能解析は比較的順調に進んでいる。しかしながら、IL-10を制御するアミノ酸分画の同定実験には至っておらず、引き続き実験系の確立に努める。
NSAID小腸炎モデルを用いて、アミノ酸による小腸マクロファージの制御と上皮修復の関連ついて実験を進める。小腸マクロファージの機能制御に関わるアミノ酸同定については、マウスにアミノ酸含有食/アミノ酸非含有食/ある特定のアミノ酸を配合した食事を2週間程度与えた後に、小腸粘膜を採取し、小腸粘膜固有層中のマクロファージ数、粘膜/筋層の萎縮の有無、腸内細菌叢の変化を評価し、小腸の環境維持に寄与する特定のアミノ酸を同定する。
本年度に施行予定であった小腸IL-10産生性マクロファージ制御に寄与するアミノ酸分画同定実験を次年度施行予定としたため、そのための備品購入を先送りとした。次年度も、研究計画書に沿って使用する予定である。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 1223
https://doi.org/10.1038/s41598-018-38125-x
Medical Science Digest
巻: 44 ページ: 401-404