研究課題
本年度はSEMA3のサブタイプのうちSEMA3Aの抗腫瘍効果の検討を継続した。ヒト神経芽腫細胞株SK-N-ASにSEMA3Aを添加し、24、48時間後の神経突起長を計測して神経分化能を検討したが、添加群と非添加群とで有意な差を認めなかった。一方、Matrigel invasion assayで細胞浸潤能を解析したが、SEMA3Aによる細胞浸潤抑制効果の再現性がとれず実験が難航した。このため、SEMA3Aの作用を再検討することを目的にsiRNAを用いた実験を行った。SEMA3Aの発現抑制48時間後の細胞浸潤能をInvasion assayで解析すると、siRNAによるSEMA3Aの発現抑制で有意に浸潤能が亢進した。またSEMA3Aの発現抑制48時間後の細胞遊走能をWound healing assayで解析すると、SEMA3Aの発現抑制で有意に遊走能が亢進した。続いて、SEMA3Aの発現抑制による浸潤、遊走に関連する蛋白の発現変化についてWestern blottingで解析すると、SEMA3Aの発現抑制によりIntegrin β1の発現が亢進することを確認した。Integrin β1のRNAレベルの発現についてReal-time PCRで解析すると、SEMA3Aの発現抑制によりIntegrin β1の有意な発現亢進を認めた。さらに、SEMA3Aの発現抑制によるIntegrin β1下流経路のリン酸化状態の変化をWestern blottingで解析すると、SEMA3Aの発現抑制でFAKおよびPI3Kのリン酸化が亢進しており、FAK-PI3K経路の活性化を認めた。以上より、ヒト神経芽腫細胞株SK-N-ASにおいて、SEMA3Aの発現を抑制すると、Integrin β1の発現が上昇し、FAK-PI3K経路が活性化され、腫瘍細胞の浸潤・遊走能が亢進することが考えられた。
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International Journal of Oncology
巻: 53 ページ: 159-166
10.3892/ijo.2018.4397