研究実績の概要 |
腸管神経堤由来細胞(ENCCs)は、胎児期に腸管内を口側から肛門側に移動し腸管神経系(ENS)を形成するが、発生後期には移動は抑制される。細胞マトリックス(ECM)は、ENCCsの遊走を調節することで、ENS形成に寄与する。しかし腸管発生におけるECMのENCC運動を調節するメカニズムは未だ解明されていない。今年度は、定量PCRで明らかにしたマウス腸管発生におけるECM発現の経時変化と、ECMによるENCC運動調節メカニズムについて研究した。胎性11.5、12.5、13.5、14.5日のマウス腸管からRNAを調製し、定量PCR法を用い、腸管発生におけるフィブロネクチン、コラーゲンI~VIのRNA発現を調べた。その結果コラーゲンI, II, IV, V, VIはE13.5から増加し、コラーゲンIII,フィブロネクチンはE12.5から減少した。E11.5からE14.5にかけて最もRNA発現量が増加したコラーゲンVIに着目し、E11.5とE15.5の腸管におけるタンパク質発現を蛍光免疫染色で確認したところ、E11.5と比べE15.5で有意に増加が観察された。次にコラーゲンVIとフィブロネクチンのENCC運動への関与をin vitro ENCC運動アッセイで調べた。その結果、コラーゲンVIは単独で細胞遊走を亢進させるが、フィブロネクチン誘導性の細胞運動は抑制した。さらにECM-細胞間の相互作用で活性化する細胞接着斑タンパク質について調べたところ、フィブロネクチンで誘導されるp130Casのリン酸化及びタンパク質発現がコラーゲンVIの存在下では抑制されていた。本研究結果から、コラーゲンVIは腸管神経の発達に伴い発現を亢進させ、発生後期にはフィブロネクチン誘導性のENCC遊走を細胞接着斑構成タンパク質の発現安定性を損なうことで抑制していることが示唆された。
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