平成30年度は29年度に引き続き臨床検体の採取ならびにバイオフィルム検討と治療法の効果判定を行った。これまでに採取した検体数は22であった。慢性創傷の種類としては、褥瘡が最多(50%)で、次いで糖尿病性足潰瘍(28%)であった。基礎疾患としては、糖尿病高血圧、高脂血症を有し、脊髄損傷の割合も比較的高かった。検出細菌の割合は、MSSAの頻度が最も高く、次いでCorynebacterium sp、 Pseudomonas aeruginosaの順であった。当科における慢性創傷患者のバイオフィルム検出率は33%であった。バイオフィルム検出細菌は、Pseudomonas aeruginosaが最多であった。洗浄型の陰圧閉鎖療法(NPETid)を使用したところ、バイオフィルムの発達が抑制されているのが確認された。この結果より、洗浄ならびにNPWTidがバイオフィルム抑制に有効な手段であることが示唆される。これらは今後も症例集積を続ける予定であり、今までのデータとあわせて、今秋の国内の専門学会にて発表を行う予定である。 加えて、慢性潰瘍患者は虚血疾患を有していることも多く、緑膿菌感染マウスモデルを用いて、創部のバイオフィルム形成を確認した。その結果、創部のバイオフィルム形成の低下、好中球の減少を認めた。これらの結果をまとめて、JDDSに報告した。
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