共同研究者が開発した細胞伸展マイクロデバイス(特許番号:特許第4931017号)を用いて、正常皮膚由来線維芽細胞およびケロイド由来線維芽細胞に対して、繰り返しストレッチ刺激を加えながら(伸展強度:10%,周期:12回/分)、共焦点レーザー顕微鏡下に0.5秒毎の連続撮影することで(5分間)、個細胞あたりのカルシウムシグナル応答について動的観察を行った。 カルシウムイオン(Fluo-8H)と細胞質(Calcein Red-Orange)を蛍光標識させて、細胞内カルシウムイオン濃度を蛍光輝度比で表し、ケロイド由来線維芽細胞(N=3)と正常皮膚由来線維芽細胞(N=3)における繰り返しストレッチ刺激に対するカルシウムシグナル応答について検証した。 結果として、ケロイド由来線維芽細胞(20.0±6.0%)では、正常皮膚由来線維芽細胞(6.90±2.4%)と比較して、細胞応答率が有意に高かった(P<0.05)。また、ケロイド由来線維芽細胞の蛍光輝度比のピーク値(2.16±1.02)は、正常皮膚由来線維芽細胞(1.45±0.30)よりも有意に高値であった(P<0.05)。さらに、正常皮膚由来線維芽細胞からROC解析したカルシウムイオン濃度のピークのカットオフ値は1.77となり、ケロイド由来線維芽細胞ではカルシウムイオン濃度が異常に高値となる細胞集団が約13%存在することがわかった。以上から、繰り返しストレッチ刺激によって、病的なカルシウムシグナル応答を示す細胞集団が、ケロイド体質特有の病的応答である可能性が示唆された。 現在、長時間観察(30分間)も行っており、正常皮膚由来線維芽細胞では一度feedbackがかかると細胞内カルシウムイオン濃度は上昇しないが、ケロイド由来線維芽細胞では複数回の細胞応答を示す細胞集団が存在し、検証を進めている。
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