研究実績の概要 |
放射線照射後の脂肪注入による乳房再建は、乳房温存術後の小さな変形であっても非常に治療困難で、その原因は晩期障害として微小血管の閉塞や過剰な線維化が起こることにより、乳房皮膚が硬く乾燥し、創傷治癒機序が正常に働かない状態となっているためと考えられる。脂肪幹細胞付加脂肪注入による乳房再建は、放射線照射後の組織の肥沃化効果が期待される。当科では2019月よりより脂肪幹細胞の培養・凍結等の細胞加工を他社に委託する、培養細胞幹細胞付加脂肪注入を開始した。本研究では、培養脂肪幹細胞付加脂肪注入による乳房再建を行なった患者を中心に、脂肪注入による放射線照射後の皮膚の改善度を調査した。 乳癌術後かつ放射線照射後で、培養脂肪幹細胞付加脂肪注入または純脂肪による脂肪注入による乳房再建を希望した患者5名(培養脂肪幹細胞4名、純脂肪注入1名)を対象とした。術前にCutometer dual MPA580を用いて、乳房皮膚ABCD領域で粘弾性測定を行いR0(皮膚の張り、硬さ)、R2,5,7(弾力性)、R9(皮膚疲労効果)で評価した。またCTまたはMRI検査、VECTRA(3D立体画像装置) で、術前の体積評価を行った。脂肪注入術後6ヶ月の時点で、乳房皮膚の粘弾性を再度計測した。健側と同等体積、または本人が満足する大きさまで脂肪注入手術を半年以上の間隔をあけて繰り返した。最終手術完了後半年で再度体積評価を行った。現時点で手術を3回行なった症例が2例、2回が2例、1回が1例であった。手術完了した症例が2例、終了見込みが1例、治療途中が2例であった。皮膚粘弾性測定は各手術毎に行い、評価を行った。
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