研究実績の概要 |
軟骨再生医療の臨床応用において、再構築軟骨組織の大きさや形態の調整方法は未だ確定しておらず、解決課題となっている。本研究では耳介のように複雑な形状を持つ再生軟骨を任意に創出すべく、ヒト耳介軟骨前駆細胞由来の膜状軟骨を利用したオーダーメイド軟骨再構築法を開発、検討した。これは3次元実体モデルを型とし、その上にin vitroで培養した膜状軟骨を重ね、任意形態の軟骨組織を創出する方法(Liao et al.,2015)である。我々は成熟軟骨細胞より細胞増殖能、軟骨分化能の高い、ヒト耳介軟骨由来軟骨前駆細胞を細胞源として利用し、本手法を検討した。 まずCTデータから耳介軟骨相当部分を描出し、3Dプリンターを用いて3次元実体モデル化した。この表面にヒト軟骨前駆細胞から作製した膜状軟骨組織を乗せ、耳介形態の作製を試みた。 その結果CTデータからの耳介軟骨3次元実体モデル作製は最適化しえたが、膜状軟骨から耳介形態を持つ軟骨再生に難渋したため、これ以降の動物移植実験を断念した。 そのためバイオインクとして頻用されているナノセルロースを用いた形態調整法を用いて、耳介形状を持つ軟骨組織作製を試み、追加で検討した。本検討ではナノセルロースファイバーに2.5%アルギン酸ナトリウムを加えたものをバイオインクとし、塩化カルシウムによりクロスリンクさせることで形態を保持させた。耳型組織は事前に作製した耳介軟骨実体モデルから本バイオインクを用いて鋳型を作製し、この鋳型に細胞入りのバイオインクを流し込んで作製した。作製したサンプルを免疫不全マウスへ移植し3か月後回収した。結果、回収組織の軟骨形成は非常に未熟であったが、形態調整や形態維持に一定の成果を得た。今後さらに効率的な軟骨再生方法の検討を要する。
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