研究課題/領域番号 |
17K17032
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
櫻井 洸貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60772473)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性創傷治癒 / マクロファージ / PPARγ |
研究実績の概要 |
糖尿病性潰瘍のために下肢切断をされた患者の生命予後は著しく低下すると言われており、温存療法により創部の治癒と、QOL の改善を目指している。今ま でに糖尿病性潰瘍に対して糖尿病治療薬を局所に作用させることは少なく、インスリンシップ(インスリンを含浸させたガーゼの貼付)を行われた時代もあった が、血糖の低下の危険性があり現在ではほとんど行われていない。PPARγアゴニストの一つである Pioglitazone はアディポネクチン産生脂肪細胞への分化誘導によるインスリン抵抗性の改善・レプチン産生やマクロファージの Phenotype を M1 から M2 に変化させる ことによる創傷治癒促進効果、iNOS・TNFα・MMP9 阻害による抗炎症作用などが報告されている。マクロファージの動態を観察するために、まずマクロファージの回収に着手。FACS(フローサイトメトリー)を用いてより単一の細胞となるように回収を行った。コントロールとして脾臓のマクロファージを使用した。CD11b、CD45、F4/80などの抗体を組み合わせて数回にわたり条件検討を行った。FACSでの回収が可能であることを確認。次にMACS(細胞磁気分離)での短時間での細胞分離を行った。その後、MACSで回収した細胞の精製率を評価するために、再度FACSを行い、90%前後の精製に成功した。こうした結果によりより正確にマクロファージの評価が可能になり、今後の実験を遂行する上での準備ができたと考える。MACSで回収したマクロファージをより細かく解析を行う。また組織像の評価を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験を遂行するにあたり、より正確な評価をするために、FACS・MACSを用いての単離を行った。このために抗体選択や手技の獲得、条件検討のために時間を要してしまった。しかし、これらは今後評価を行うためには重要な手技の習得であり、必要不可欠であった。前年度は出向中であり、日程調整を必要とし、時間が取れなかった点も進行の遅れの原因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージのphenotype M1 ・M2 のマーカを観察しM2 マクロファージへの分化が早期に誘導されることを確認する。M1 マーカとしてMCP1 、M2マーカとしてはCD68 CD206が知られており、これらを染色し発現の確認をすることによりPioglitazone の作用がマクロファージ分化誘導に寄与していることを 観察する。 WesternBlottingを用いてIL6およびTNFα・TGF-βなどの炎症性サイトカインの評価を行う。現段階では、創収縮には筋線維が細胞の影響が考えられ、関連性の高いTGFβの増減の観察が最も重要であると考える。またTNFαは極めて早期のPPARγ発現の関与が示唆されており、有用なデータが得られることが予想される。期間を限定して短期での増加減少の観察が良いと考えている。 次に組織切片を用いた免疫組織学的評価を行う。主にM1/2マクロファージに関して検討を行う。長期徐放の方がM2マクロファージの増加が確認できると考えられ、ここでも申請者の見解ではあるが、早期に増殖期を迎え、さらに再構築期に移行することが考えられる。 一連の予定よりは遅れているが、着実に進行すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画が遅れており、この点で消耗品の使用が少なかったためである。また出向先の都合によって、研究は発表に行くことができずこの点でも使用が少なかった。今後は実験を遂行するにあたり、前年度に使用しなかった抗体・成長因子の使用が追加されるため本年度の使用が増えると考える。
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