研究課題/領域番号 |
17K17037
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
柘植 琢哉 日本医科大学, 医学部, 助教 (40774352)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱傷 / 褥瘡 / スフィンゴシン1-リン酸(S1P) |
研究実績の概要 |
まず、ラットdeep dermal burn (DDB)モデルを作成し、スフィンゴシンー1リン酸 (S1P)外用の創傷閉鎖における効果を検討した。ラットDDBモデルの作成は、既存の論文に基づき、問題なく作成することができた。ラット背部に、直径1cmの円形のDDB を4か所作成し、1日おきにコントロールまたはS1P外用治療およびフィルムによる密閉ドレッシングを行った。画像解析ソフトを用いて熱傷エリア解析を行った。S1P外用を行った熱傷は、コントロールと比較して、有意に創傷閉鎖が促進された (p=3.55x10-49 )。 次に、受傷および治療開始7日目における、光超音波イメージングを使用した血流・血管新生解析を行った。また、創部をサンプルとして回収し、血管内皮のマーカーであるCD34の免疫染色にて、新生血管の数を解析した。免疫染色の結果、1視野あたりの新生血管の数は、S1P外用を行った熱傷で有意に多かった (p=0.010)。また、光超音波イメージングの結果、S1P群のシグナルはコントロール群と比較して、強度・密度が有意に大きかった。さらに、我々は、受傷後7日目における創表面を壊死組織が、S1P群で少ないことに着目した。これについて、2つの仮説を立てた; ①S1Pはマクロファージ分画M1を誘導し、壊死組織融解の促進に寄与する。②S1Pは、S1Pレセプターシグナリングにより、組織障害を促進する一酸化窒素産生酵素 (iNOS)を制御し、組織保護に貢献する。①の仮説について、受傷後7日目で熱傷組織を採取し、細胞を分離し、フローサイトメトリーを用いてマクロファージ分画を調べることにした。ラット由来細胞のフローサイトメトリーの報告は少なく、現在、抗体の選択や実験条件の検討を行っている。同時に、マクロファージのマーカーであるF4/80の免疫染色も行い、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、今年度中にラットDDBモデルにおけるS1Pの創傷閉鎖促進効果および血管新生促進効果について検討し、30年度はマクロファージ分画に焦点を絞って進めていくというものである。ラットDDBモデルの作成が予定通り短期間で行えた。また、熱傷エリア解析におけるS1Pの創傷閉鎖効果は仮説の通りであり、血管新生についての検討まで概ね完了することができた。よって、予定どおり概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、計画通りに推進していく予定である。30年度は、フローサイトメトリーによるマクロファージ分画の解析、iNOSの免疫や定量などによる組織障害の評価に焦点を当て、進めていく。最大の課題は、臨床業務との両立である。時間を有効に使うように努め、予定した期間までになるべく研究を遂行するよう努力する。 次年度使用額が生じた理由としては、大型機器は共用のものを使用し、不都合はなかった。また、小型機器についてもほとんどは共用のものを問題なく使用することができたため、購入の必要がなかった。一方、FACSや免疫染色、タンパク定量など、比較的高額な試薬を必要とし、条件検討も複数回必要と思われる実験が次年度に集中してしまった。 今後の使用計画として、上記の理由により、次年度は、予定金額を上回る可能性が高い。必要な物品、試薬の購入に使用し、予定通り本実験を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初からの計画通り今後も追加での研究が必要で有り、大型実験装置(FACS含む)は共用のものが各種備えられており使用できが、小型実験装置も備えられているものもあるが、一部備えのないもの(スケール、スターラー等)は購入する必要がある。実験器具(メスシリンダー、ビーカー、フラスコ等)については、教室で所持してはいるものの、不足分は購入する必要がある。試薬などの消耗品は研究費に計上しているとおりで、これらの費用は研究遂行のために必要となる。 また、本研究で得られた結果を今後も国内外での発表を予定している。
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