研究課題
リンパ浮腫は、その初期においては、リンパ液の貯留により、リンパ管内圧の上昇が起きる。この状況が持続すると、リンパ管の平滑筋細胞の非可逆的な変性が起き、リンパ管の正常な収縮能が徐々に障害を受けていく。貯留したリンパ液は皮膚の毛細リンパ管へと逆流し、ICGリンパ管造影検査などで、皮膚逆流所見(dermal backflow pattern: DBF)として認知される。さらに貯留したリンパ液は脂肪組織の増生を引き起こす。増生した脂肪組織はさらにリンパ管にかかる負荷を増加させ、ポンプ作用を阻害する。このようなリンパ液の貯留、リンパ系の負荷と損傷、脂肪組織の増生が繰り返され、浮腫はますます悪化する。そして疾患の進行により、治療の難度も上がる。治療の方法としては、圧迫療法を中心にした保存療法、外科的治療として浮腫組織切除、顕微鏡を用いたリンパ管静脈吻合やリンパ節移植術、脂肪吸引術などが行われているが、リンパ浮腫のどの段階でどの治療が用いられるべきかなど、まだまだ議論の余地が多い。我々は、リンパ浮腫脂肪組織の臨床検体の解析を行った。免疫組織化学染色、ホールマウント染色、フローサイトメトリー解析を行い、リンパ浮腫脂肪組織における各種細胞の変化、免疫機能の変化を解析することができた。長期に渡るリンパ液の貯留状態は、慢性炎症や進行性の線維化、脂肪組織の恒常性の破綻、再生能の減少、免疫細胞の異常などの変化を引き起こしていた。これらの病理学的変化は進行性で非可逆的であるため、早期の治療介入が重要と考えられる。また、各病期における最適な治療選択を考える上でも、本研究の視点は役立つと考えられる。リンパ浮腫の脂肪組織に関しては、まだ分かっていないことも多く、さらなる研究の促進がよりよい治療戦略へと結びつくだろう。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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