研究実績の概要 |
本研究は当初アンチトロンビン(AT)の血管内皮に及ぼす抗凝固作用、抗炎症作用の影響を電子顕微鏡を用いて可視化し、さらに内皮表面にあるグリコカリックスの保護効果にも着目し、その影響を評価することを目的としていたが、市場にリコンビナントAT(rAT)製剤が登場したことから、試薬をrATに変更し検討を継続することとした。 平成29年度は、すでに確立しているLPS20mg/kgを腹腔内投与して得られる敗血症モデルマウスを用いて、まずrATの至適投与量の検討を行った。LPS投与後3、24時間後に100IU/kg、500IU/kg、750IU/kg、1000IU/kgのrATを投与し、48時間後の生存率を確認した。結果、非治療群が22%であったことと比較して、各々の生存率が0%、0%、75%, 25%であったことから、rAT750IU/kg投与群で有意に生存率が改善することがわかった。次いでこの実験系を用いて、LPS投与後3、24時間後に750IU/kgのrATを投与し、48時間後の血管内皮障害のマーカーであるトロンボモジュリン(TM)を確認した。結果、心臓、肺において免疫染色でrAT群でトロンボモジュリンが保たれていることが分かった。 現在、rATによる血管内皮グリコカリックス保護効果の検討を各臓器で進めているところである。 以上より、昨年度は敗血症時にrAT投与することで生存率の改善、血管内皮障害の改善を認めることがわかった。
|