研究課題
敗血症はサイトカイン過剰発現や微小循環動態の障害により急性呼吸促迫症候群(ARDS)を引き起こす。DIC治療薬リコンビナントアンチトロンビン(rAT)は抗炎症効果を有していることから、ARDS時のrATによる肺血管内皮傷保護効果について検討した。敗血症性ARDSを超微形態学的に考察し、それに対するrATの効果を検証する。10週齢オスのC57BL6マウスにリポ多糖(LPS)を20mg/kg腹腔内注射し敗血症モデルを作製。LPS投与後3、24時間にrAT 750U/kgを腹腔内投与し、LPS投与後48時間で血管内皮保護効果を観察した。LPS投与後48時間の生存率は、rAT群(75%)でコントロール (20%)に比べ有意に改善した。肺の組織を光学顕微鏡において検討したところ、好中球の浸潤と浮腫がLPS投与により認められたが、rATによる治療によりいずれも改善が認められた。血管内皮障害のマーカーとして血清トロンボモジュリンならびにシンデカン1を計測したところrAT群ではコントロール群に比べ、有意に低くく、血管内皮障害が抑制されていることが示唆された。レクチン染色によるIntensity Scoreによるグリコカリックスの定量的考察を行ったところ、こちらにおいてもrAT治療群でグリコカリックスが保たれていることが認められた。また、超微形態ではLPS投与後肺の毛細血管内皮を覆うグリコカリックスの脱落を認めたが、rAT群では保たれていた。以上からrATにより血管内皮を保護することで、敗血症性肺毛細血管障害を抑制することができた。Genearrayによる遺伝子の網羅的解析を行ったところ、組織修復を促進する作用があることが分かった。
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Thrombosis Journal
巻: 18 ページ: 3
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