研究課題/領域番号 |
17K17050
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松浦 裕司 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10791709)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 衝撃波頭部外傷モデル / 免疫染色iba1 / 体重変化 |
研究実績の概要 |
衝撃波発生装置に関しては、まず特殊なハイスピードカメラ(1フレーム=5マイクロ秒)を使用し、実際に衝撃波が発生していることを視覚的に確認した。また、ノズル形状の調整、圧解放弁の調整、ノズルからラット頭部までの距離を決定するために予備実験を繰り返した。blast-induced mild TBIモデルとなるよう最適な距離の検索を行った。結果的に衝撃波ノズルからラットの頭部までの距離は2.5cmと決定した。衝撃波受傷前、受傷1週間後、2週間、4週間後の4ポイントで体重を測定した。コントロールでは順調に体重が増加した。頭部外傷モデルでは受傷後1週間では、-10gほど体重減少をきたしていた。 脳の解剖学的、組織学的所見:受傷後のラット頭部の外表面上、皮下組織、筋組織、骨膜、頭蓋骨を観察したが、骨折やその他外傷を疑わせる所見はなかった。また脳実質のマクロの所見では衝撃波受傷直後及び受傷後4週間の時点において、くも膜下出血や、脳挫傷など外傷性変化は認められなかった。凍結切片を作成し、前頭部領域、脳幹を含む中心領域の2つの切片を用いて、それぞれの脳組織の評価を行った。受傷直後(1-2時間後)ではiba1染色にてミクログリアの局所的な集積はなく生理学的範囲内での個数で散在していた。コントロールでは有意な変化は認めなかった。衝撃波を受傷し、4週間経過したラットの脳組織ではまず前頭部領域の切片にて嗅球の一部に多くのミクログリアの集積を認めた。衝撃波ノズル側に位置する新皮質には有意な所見は認めなかった。また中心領域においては頭頂から両外側にかけての新皮質、海馬にミクログリアの集積がみられた。以上の結果は、衝撃波によって脳に何らかの損傷をきたし、頭部外傷後の慢性的な障害を引き起こすメカニズムの一部を捉えることができている可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画としていた、衝撃波装置の実験系の確立と衝撃波頭部外傷モデルの作成はおおむね完了できている。
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今後の研究の推進方策 |
このモデルが現在問題となっている、衝撃波頭部外傷における慢性的な障害(日常生活での障害、社会復帰の妨げなど)を示していることが重要であるため、行動実験を行い、うつ様行動、認知、記憶などの障害があるかどうかの評価をおこない、有効なモデルとなっていることを証明する。またさらなる組織学的検討も行う。そのうえで治療介入について検討を行っていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の蛍光抗体の納期のずれのため。
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