研究実績の概要 |
本研究の目的は気道熱傷患者に対する呼吸理学療法の効果について①呼吸メカニクスからみた短期的な効果,長期予後との関連性について明らかにすることである. 研究は2016年4月から2019年12月に当院に入院した患者14例とした.呼吸理学療法の短期的効果の検証として気管挿管・人工呼吸管理となった患者重へ呼吸理学療法を行い,呼吸理学療法前・中・後の各40分間の3点をポイントとし重症患者管理システム(PIMS システム:フィリップス社製)を用いて人工呼吸器から得られる一回換気量,分時換気量,呼吸数,コンプライアンス,気道内圧を測定した.また,人工呼吸器離脱後には咳嗽力(Peak cough Flow),最長発声持続時間(MPT:maximum phonation time),スパイロメーターによる肺機能,強制オシュレーション法(FOT法:Most Graph:Chest社製)による気道抵抗値,リアクタンス値の測定を行った.長期的効果の検証として呼吸器合併症,転帰についても調査を行った. 結果は呼吸理学療法前後で重症患者管理システムから得られる一回換気量,分時換気量,動的コンプラアンス値,平均気道内圧は有意に改善した.また,咳嗽力(Peak cough Flow)も呼吸理学療法後には改善した.FOT法では呼吸理学療法前後で気道抵抗を示すR5,R20,R5―R20はそれぞれ抵抗値の低下は認められたが統計学的に有意な差はなかった.リアクタンス値(動的コンプラアンス)を示すX5,ALXの有意な改善が認められた.さらに長期的効果として肺炎発症例4例(29%),退院時ADL能力Barthel Index 93.2点と良好な結果であった. 気道熱傷患者への呼吸理学療法は換気能力,咳嗽力,動的コンプライアンスの改善効果が認められ,肺炎発症率の低下,ADL能力の維持に貢献できる可能性が示唆された.
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