急性心不全を発症した糖尿病患者において,血糖変動が心不全の予後をより増悪させるかを検討することを目的としている.急性心不全を発症し当院にて入院加療が必要となった糖尿病患者に,入院時および退院時に持続血糖モニタリング(CGM)を施行し,MAGE(mean amplitude of glycemic excursions),標準偏差(SD),平均血糖値(AG)を記録し,血糖変動の振幅や変動速度といったパターンの差が,入院期間,心不全死亡率,総死亡率,再入院率,再入院までの期間といった心不全予後と関連するかを検討している,さらに,アディポサイトカイン・酸化ストレス・炎症生マーカーや不整脈発症率,栄養状態,また,心不全治療薬剤(強心薬・血管拡張薬・利尿薬・β遮断薬・RAS阻害薬)とそのアドヒアランスの差が,血糖変動の差と関連するかについて評価している.身体所見・バイタルサイン・画像所見・血液尿検体によるバイオマーカー(心不全重症度としてNT-proBNP,耐糖能評価として血糖,HbA1c,インスリン等,循環動態指標としてのトランスアミナーゼ,クレアチニン,電解質,乳酸等,栄養指標としてのChEやアルブミン,中性脂肪など),心エコー図検査における各種パラメータの差が,どのような因子の影響を受けているかを解析している.加えて,心不全の原因として虚血性心疾患と非虚血性心疾患での各種パラメータの差,また収縮不全心不全(HFrEF)と拡張不全心不全(HFpEF)との差についても検討している.さらに,運動耐用能やFrailty評価値の差に与える影響についても解析を進めていく.現在研究対象となる同意を得られた患者数がいまだ十分でなく,引き続き検討を継続していく.
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