研究課題/領域番号 |
17K17059
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
茶木 友浩 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30758701)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プロポフォール注入症候群 / 酸化ストレス / 脂質過酸化反応 |
研究実績の概要 |
当該年度では、まずプロポフォール注入症候群の病態解析についての代表的な臨床徴候である横紋筋障害に焦点をあてて研究を開始した。Wistar maleラット(150-200g)の大腿静脈から中心静脈カテーテルを留置し、以下の4群に分けた。介入を行わない群(Naive群)、カテーテル挿入のみ行う群(Sham群)、1%プロポフォール10mg/kg/hrの投与を行う群(Prop群)、溶媒である脂肪性製剤100mg/kg/hrの投与を行う群;Prop群と同脂肪投与量(Lipid群)。72時間後、血清およびヒラメ筋を摘出し、血清クレアチニン値および血清ミオグロビン値を測定し、さらにヒラメ筋におけるスーパーオキサイド産生量を蛍光染色法を用いて、また脂肪酸化損傷マーカーである4-hydroxynonenalの発現を免疫染色法を用いて評価した。血清クレアチニン値および血清ミオグロビン値は、Lipid群で有意に高値を示し、さらにスーパーオキサイド産生量もLipid群で有意に高値を示した。また、ヒラメ筋における4-hydroxynonenal発現に関してもLipid群で増加していることが観察された。Prop群は血清クレアチニン値および血清ミオグロビン値の上昇は観察されず、スーパーオキサイド産生量増加と4-hydroxynonenal発現の増加も認めなかった。これらの結果から、プロポフォール注入症候群の病態として、プロポフォール製剤の溶媒として使用されている脂肪製剤自体が、酸化ストレス(脂質過酸化反応)を介して横紋筋障害をもたらし、プロポフォールはその抗酸化作用により横紋筋障害を軽減している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画立案当初考えていた病態機序とは異なる結果が得られたが、これまで考えられてきたものとは異なるアプローチから病態を捉えた新規性の高い結果であった。今後は、酸化ストレスを軽減する試薬を用いた介入を行い、治療薬・予防薬としての可能性を探る段階であり、実験計画からの明らかな遅れはないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、酸化ストレス(脂質過酸化反応)が横紋筋障害に関与していることを裏付けるデータを得るための研究を行うとともに、抗酸化物質を用いた介入を行って、プロポフォール注入症候群の予防薬・治療薬としての可能性について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりモデルラットの作成で使用する持続静注用カテーテルの消費が少なかった。次年度でのラットモデル作成時に必要となる持続静注用カテーテルを今後購入する予定である。
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