研究課題/領域番号 |
17K17061
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
吉田 圭佑 福島県立医科大学, 医学部, 病院助手 (00769573)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 急性呼吸窮迫症候群 / 急性肺障害 / 酸素ナノバブル / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、急性肺障害Acute Lung Injury(以下、ALI)/急性呼吸窮迫症候群Acute Respiratory Distress Syndrome(以下、ARDS)に対する酸素ナノバブルの有効性を調べることである。平成29年度は、ナノバブル発生装置を購入し、実験を開始した。 ARDSラットモデル作成は、計画通りの方法で達成し、ARDSにおける酸素ナノバブル水の効果の調査を開始した。また、観察期間中の麻酔維持(筋弛緩薬の投与方法や投与量など)や人工呼吸器の設定方法などについて調整を行い、実験系を確立した。 当初は、ARDSラットモデルを作成した後に酸素ナノバブル水を経気管投与し、動脈血酸素分圧・サイトカイン濃度の変化・肺の組織学的変化などを経時的に観察する計画であったが、実験を進めるうちに、経気管投与による動脈血酸素分圧やの改善効果は乏しいことが判明した。そのため、ARDSラットモデルの尾静脈より、酸素ナノバブル水を持続的または間欠的に血中内に投与し、同様に動脈血酸素分圧・サイトカイン濃度の変化・肺の組織学的変化などを経時的に観察することとした。現在までに約30匹のARDSラットモデルにおいて、酸素ナノバブル水の投与条件(投与タイミングや投与量)を変更しながら、適切な酸素ナノバブル水の投与方法を検討した。酸素ナノバブルの経静脈的持続投与は、動脈血酸素分圧の改善効果を認める傾向にあることが判明した。 今後は、コントロール群と酸素ナノバブル投与群で炎症性サイトカイン(IL-1, IL-6, IL-10, TNFα)を測定比較、より長期(1~7日間程度)の炎症性サイトカインや形態学的変化について調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、平成29年度までに、コントロール群と酸素ナノバブル群で動脈血酸素飽和度と炎症性サイトカインの測定を行う予定であった。現時点では、動脈血酸素飽和度の測定はおおむね順調であるが、炎症性サイトカインの測定は未達成であり、当初の予定より遅れている状況である。要因としては、 ①ARDSラットモデル観察期間中の麻酔維持(筋弛緩薬の投与方法や投与量など)や人工呼吸器の設定方法などの微調整に時間がかかったこと ②当初予定していた経気管的投与の効果が乏しいことが判明し、酸素ナノバブルの経静脈的投与の検討に変更したこと ③適切な酸素ナノバブルの投与方法(投与タイミングや投与量)を検討するのに時間を要したこと などが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、コントロール群と酸素ナノバブル群の2群間で、炎症性サイトカインを測定し比較する方針である。また、酸素ナノバブルの投与方法(投与タイミングをARDS発症の前と後で比較するなど)を変更しながら、動脈血酸素飽和度や炎症性サイトカインを測定・比較する。
また、当初予定していた亜急性実験を行う予定である。酸素ナノバブル水を投与した後、より長期(1~7日間程度)の炎症性サイトカインや形態学的変化について調べる予定である。
実験で得られたデータを分析し、学会や論文において報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の発生は、以下の主な理由による。 ①平成29年度に予定していたアメリカ麻酔学会(ASA2017)欠席 ②実験の遅れにより、平成29年度の購入予定だった分のサイトカイン測定キットが未購入である 今後は、2018年6月のヨーロッパ麻酔学会(ESA2018)への参加と、サイトカイン測定キットの購入に使用する予定である。
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