研究課題/領域番号 |
17K17062
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
東條 健太郎 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80737552)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ARDS / 細胞死 |
研究実績の概要 |
前年度までにLPS誘導性肺傷害モデルにおける肺胞上皮細胞死において,気管支肺胞洗浄液中の上皮細胞の全細胞死マーカーであるサイトケラチン(CK)18M65,アポトーシスマーカーであるCK18M30を測定することで,ネクローシスが主体であることが明らかになっていた. 本年度はさらに,肺組織切片を用いて,ネクローシス,晩期アポトーシス細胞の生体へのヨウ化プロピジウム(PI)投与によるラベリング,アポトーシス細胞のTUNEL染色によるラベリングによって細胞死のパターンを評価した.CK18M30,M65マーカーを用いた結果と同様に,気管内塩酸投与肺傷害モデルにおいてPI陽性細胞が著増した一方,高濃度酸素曝露肺傷害モデルにおいてはTUNEL陽性細胞が貯蔵した.さらに,LPS誘導性肺傷害モデルではPI陽性細胞が優位に増加した一方,TUNEL陽性細胞の増加はほとんど見られなかった.以上から,組織切片を用いた検討でも,LPS誘導性肺傷害においてネクローシスによる肺胞上皮細胞死が主体であることが確かめられた. 次に,LPS誘導性肺傷害モデルにおいて制御されたネクローシスに関連する遺伝子群の発現が増加しているか網羅的に検討するために肺組織中の遺伝子発現をPCRアレイキットを用いて解析した.変化の見られた遺伝子群に対してgene ontology and pathway enrichment analysisを行った結果,necroptosisに関与する遺伝子群の発現が有意に亢進していることが明らかになった. また,以上の結果をまとめ,学会発表および論文投稿を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPS誘導性肺傷害モデルの肺胞上皮細胞死においてネクローシスが有意であること,またネクロプトーシスの関与の可能性について明らかにすることができ,学会発表及び論文投稿できている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
LPS誘導性肺傷害のみならず,人工呼吸を行うことで肺胞上皮細胞死のパターンにどのような変化が見られるか検討を開始している.さらに,LPS誘導性肺傷害だけでは遠隔臓器の明らかな障害は生じないため,人工呼吸を加えたモデルで遠隔臓器障害についても評価を行う予定である.最終的には制御されたネクローシスへの介入により,肺障害,遠隔臓器障害が軽減できないか検討を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
肺傷害モデル動物において,制御されたネクローシスを阻害することで肺傷害が軽減できるかどうかの検討にまで至らなかったため,次年度使用額が生じた.翌年度には制御されたネクローシスの分子経路に対する阻害剤等を用いて,肺傷害を軽減するかどうか検討するとともに,肺傷害における細胞死と遠隔臓器障害に関わる研究に助成金を用いる予定である.
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