研究課題
2017年4月から2021年3月に横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターに搬入した小児症例を対象とした後方視的研究において、既存の緊急度評価法であるPAT法;Physiological and Anatomical TriageとTRTS法;Triage Revised Trauma Scoreをもとに新・小児緊急度判定スコア(PPATS法;Pediatric Physiological and Anatomical Triage Score)を開発した。PPATS法の長所として、既存法より緊急で治療を要する重症患者をトリアージする精度が高く、スコアリングシステム有しているため重症度と緊急度を客観的な数値で評価することができる点が示された。平成30年度は、日本外傷データバンク登録データ(55626例)を用いて、災害時に多数発生すると予測される小児重症外傷および熱傷患者に対するPPATSの有用性を後方視的に検証した。小児重症外傷・熱傷患者に対しPPATS法でトリアージした場合、緊急治療群をトリアージできる精度は既存法より高いことが示された。また、PPATS合計点と緊急度・重症度に正の相関を認め、PPATS法の使用により治療や搬送の優先順位を客観的に決定できる可能性が示された。一方、小児のバイタルサインの正常範囲を年齢毎に評価する必要があるPPATS法の実用化に向けては使用の煩雑さを改善する必要があった。本年度は、PPATS法を用いた小児の緊急度判定を簡便に実施できるよう、モバイル端末で使用可能なアプリケーションソフトウェアの開発を進めている。平成31年度には、シミュレーション研究により開発したアプリケーションの実用性を検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
新・小児緊急度判定スコアリングシステムの開発、小児患者へ適用した場合における精度の検証、使用時の簡便性と診断の迅速正を担保するためのアプリケーションソフトウェアの開発が、当初策定した研究計画書のタイムスケジュールに沿って実行できているため。
平成31年5月初旬には、新小児緊急度判定スコアリングシステムのアプリケーション(暫定版)を完成させる。災害など多数傷病者の診療に従事する可能性の高い救命救急センター医師および看護師を対象としシミュレーション研究を実施し、暫定版アプリケーションソフトウェアの実用性を検証する。この検証結果をもとに改良を加え、簡便性かつ迅速性を備えた小児緊急度判定アプリケーションソフトウェアを完成させる予定である。
アプリケーション開発と実用性の検証を当該年度から来年度にかけて実施するため、予算に関しても次年度の予算を使用する必要があったため。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Prehosp Disaster Med.
巻: Epub ahead of print ページ: in print
Disaster Med Public Health Prep.
10.1017/dmp.2018.98.
10.1017/dmp.2018.127.
巻: 33 ページ: 147-152
10.1017/S1049023X18000109.