研究課題/領域番号 |
17K17065
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
園部 奨太 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90771808)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | エピジェネティクス / Setdb2 / ARDS |
研究実績の概要 |
急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)は致死率の高い、予後不良の急性炎症性疾患のひとつであるが、その分子病態は十分にはメカニズムは理解されていない。近年、急性炎症もエピジェネティクスが関与していることがわかり、ARDSモデルマウスの肺では転写抑制に機能するヒストンメチル化酵素Setdb2の発現が上昇していることも判明し、急性炎症に対するSetdb2の関与が示唆されつつある。申請者は、マクロファージ特異的Setdb2欠損マウスを確立しており、それらでARDSモデルを作製した。ARDS作製にあたって、リポ多糖(Lipopolysaccharide:LPS)を直接気管内投与することによる直接型ARDSが、 LPSの腹腔内投与などによる間接型ARDSよりも、よりLPSへの反応が顕著であり実験系を確立しやすいことが判明した。野生型マウスと比較し、①肺の形態学的変化の違い、②気管支肺胞洗浄(Bronchoalveolar lavage:BAL)で肺胞内の好中球やマクロファージの出現の違い、③RT-PCRを用いた炎症性サイトカイン発現の違い、を中心に研究してきた。その中で、RT-PCR,組織所見を総合するとマクロファージ特異的Setdb2欠損マウスでは野生型に比して、炎症反応が増悪していることまで判明してきた。LPS刺激したSetdb2欠損マクロファージにおけるサイトカインや活性酸素の産生を定量的評価するために各種炎症性サイトカインに対してELISAを行ったが、有意差を認めるには至っていない。また、BALについては、好中球に比してマクロファージの出現がマクロファージ特異的Setdb2欠損マウスにおいてやや増加している傾向にあることがわかっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロファージ特異的Setdb2欠損マウスではARDSモデルの病態が悪化することが、組織学的にはHE染色により判明した。またRT-PCRを用いて各種炎症性サイトカ インの定量測定を行い、分子レベルでもマクロファージ特異的Setdb2欠損マウスでは炎症が増悪することが判明してきた。しかし、実際に炎症性サイトカインの定量評価をELISA法により測定しても有意差は認めず、その原因について現在究明中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、まず骨髄由来マクロファージをLPS刺激し、発現変動する遺伝子群の違いをDNAマイクロアレイによって網羅的に解析した結果を待つ。その後、Setdb2の制御因子、マクロファージの機能に与える影響を検討し、Setdb2の標的遺伝子の解析と、それら標的遺伝子のARDS重症度との関連を調べることにより、予後予測・診断マーカーとして確立させることを目指す。具体的には、変動した遺伝子が直接の標的遺伝子であるかをSetdb2ならびにH3K9メチル化に対する抗体を用いてChIP法(クロマチン免疫沈降法)により検討する。標的遺伝子の機能はsiRNAによる発現抑制をマクロファージ細胞株で行い、遺伝子発現や機能に与える影響を解析する。Setdb2の役割を究明するために、マクロファージ特異的Setdb2欠損マウスを用いているが、その他の細胞に対してSetdb2をノックアウトしたマウスも今後は研究対象としていく予定である。
|