平成29年度においてラットのシスプラチン腎症と虚血再灌流モデルの確立のための実験を施行し,シスプラチン腎症においてはシスプラチン5mg/kg/dayではday3 をpeakとしてクレアチニンや尿素窒素の上昇を認めた。シスプラチン10mg/kg/dayではday3で半数のラットが死亡するため,シスプラチン障害が強く評価困難と判断した。そのため,本実験にはシスプラチン5mg/kg/dayを用いて行うこととした。虚血再灌流モデルにおいてはまず片側腎臓摘出術(右側)を施行後,1 週間の安静期間をあけた後に虚血再灌流(左側)を血管クランプで30分間クランプを行った。虚血再灌流後1日目の血液検査で著明な腎機能障害を呈し,虚血時間を調整するも腎機能障害が高度のためランソプラゾールの保護効果を検討するのが難しいと判断した。令和元年より両側虚血再灌流障害へ腎障害モデルを変更して検討を行ったが,両側虚血再灌流障害での腎機能障害のばらつきが大きく一定した障害を作成するのに難渋をした。そのため,腎障害モデルとしてはシスプラチン腎症のみランソプラゾールの保護効果を検討していく方針とした。 当初の予定とは異なるがNrf2ノックアウトラットも完成し,飼育を始めている段階で ありシスプラチン腎症でのランソプラゾールの保護効果をNrf2ノックアウトラットでも検討していく予定であった。大学病院としての臨床業務と教育業務をともに行っていたが,COVID-19感染流行による臨床多忙のため実験計画が遅延した。最終的にCOVID-19の感染拡大が落ち着かず、シスプラチン腎症に対するランソプラゾール投与を行っており予定していた実験が完遂できていない。
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